製造法を工夫しりんご本来の触感を再現した「りんごプレザーブ」
千曲市森地区に本社を構える森食品工業(株)は、1965年に森農産加工農業協同組合の加工部門が独立し設立された企業です。
同社は、「あんずの里」として名高い地元千曲市のあんずをはじめ、桃やりんごといった果物を原料にピューレやジャム、プレザーブなどの加工品を製造・販売しています。同社の製品は、「完熟あんずジャム」が2006年に農林水産大臣賞を、「信州産あんず乾」が21年に長野県知事賞を受賞するなど、これまで数多くの受賞歴を誇ります。
全国に自社製品を提供
同社のイチ押しは、「りんごプレザーブ」です。
プレザーブとは、材料の果物を完全につぶさず、原形を残すように糖類等で煮たものです。同社は、創業当初からりんごプレザーブの製造・販売を行っており、北海道から九州まで数多くの事業者に同製品を提供しています。提供したりんごプレザーブは、アップルパイやデニッシュパン、タルトなど製菓・製パン原料として幅広く利用されています。
同社が製造するりんごプレザーブ。アップルパイやデニッシュパンなど、幅広く利用されています
りんご本来の風味と食感を生かした製法
同社のりんごプレザーブは、りんご本来の触感を味わえる仕上がりとなっていますが、そうしたプレザーブを提供できる秘訣は製造工程の工夫にあります。
通常の製法では、りんごとシロップを混ぜ合わせた状態で加熱を行い、果肉に糖液を染み込ませます。ただ、この製法では短時間で効率的に製造を行える半面、りんごの形が崩れやすいなどの欠点があります。一方、同社の場合は、りんごとシロップを同時に煮詰めることはせず、りんごのみ加熱した上で、後からりんごとシロップを袋の中に入れ、りんごにシロップを浸透させる製法をとっています。こうすることで、形状の崩れを防ぐとともに、りんご本来のシャキシャキとした食感を再現できます。りんごはそのままにシロップの糖度を変えることで、プレザーブの糖度も素材に合う度数に調整可能です。
同製品で使用されるりんごは長野県産、青森県産の2種類で、顧客の希望に沿ったものを使用しています。また、りんごならではのシャキシャキ感を味わえる小粒な角切や、風味を堪能できる大きめな扇形など、用途に応じて異なる形状のプレザーブを取り揃えています。
長野県産の良質な果物の風味を届けたい
同社はりんごプレザーブ以外にも、長野県産の厳選された原料を使用した香り、色に優れた高級あんずジャムや、料理の隠し味など幅広く使用可能な果肉汁(ピューレ)といった製品も製造しています。各製品は、同社敷地内にある直販所や同社の公式通販サイトから買い求めることができます。
「優れた品質で、お客様満足と食の安全・安心を柱に、環境・資源を大切にして、社会に貢献する」が経営理念であり、「今後も、この理念を大切に、県内の良質な果物の風味を全国に届けていきたい」と岡田克美社長は語ってくれました。
(左上)果実を丸ごと煮詰めて裏ごしした果肉汁(ピューレ)。料理の隠し味など、さまざまな用途に使われます(右下)長野県産の原料を使用した高級あんずジャム。ほどよい酸味とさわやかな風味が特徴です
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