賃上げの動向と対応<2023.11.10>

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最終更新日: 2023年11月10日

 2023年は賃上げの年と言われています。そこで、最近の賃上げの動向やベースアップと定期昇給の違いなどについてご案内します。

1.県内の春季賃上げの平均妥結額は25年ぶり7,000円台に

  長野県の最低賃金が、2023年10月1日から948円(時間額)に改定されました。40円(引き上げ率4.41%)の引き上げは、過去最高の上げ幅です。最低賃金が上がることで、パート等の時給が上がるだけでなく、正社員の賃金の見直しが必要となるケースもあり、注意が必要です。

 一方、長野県産業労働部によると、県内の23年の春季賃上げの平均妥結額は7,557円で、前年同期比2,896円増加し、1998年以来25年ぶりに7,000円台となりました。また、平均賃上げ率は2.93%で前年同期を1.11ポイント上回りました。全国については、連合の発表によると賃上げ率は3.58%で、30年ぶりに3%台となっています。

 県内について賃上げの内訳をみてみると、妥結の内訳状況が分かる組合のうち、定期昇給(以下、定昇という)・ベースアップ(以下、ベアという)ともに引き上げた組合は159組合中85組合と半数以上となり、ベアを実施した組合は合計113組合で、全体の71.1%と昨年を14.5ポイント上回りました(図表1)。

 

 

2.賃上げにはベアと定昇があります

  必要な人材の確保・定着のためには、賃上げにより魅力的な賃金水準にしていくことが求められますが、賃上げには、ベアと定昇があります。

 ベアは、勤続年数や役職にかかわらず、全体の給与水準を一律に上げる方法です。その目的は、近年のような物価の上昇に対する生活水準維持のためや従業員のモチベーションアップなどのためです。全員の給与水準が上がるので賃金表を書き替える必要があります。

 一方、定昇は昇給を定期的に全員に適用し、社員1人1人の仕事における成長を賃金に反映させる方法です。賃金表に基づいて制度的に行われ、多くの企業は1年に1回行っています。通常、賃金表の書き替えは発生しません。

 

3.ベアの実施方法

  ベアには、(1)全社員に対して同一アップ率を適用する定率配分と、(2)同一アップ額を適用する定額配分、(3)両方を組み合わせて行う方法があります。  

  図表2の例では、(1)定率配分の場合、若手(+2万円)よりベテラン(+3万円)の昇給が多くなります。(2)定額配分の場合、ベテラン(+3.3%)より若手(+5%)の賃金のアップ率の方が高くなります。

 ベアに用いる方法、組み合わせの比率は、どの層の賃金を重点的に上げたいかにより変わります。

 いずれの方法でも、ベア実施時には賃金表の書き替えが発生します。当研究所では賃金表の書き替え、賃金制度の見直しなどのご支援を行っています。お気軽にご相談ください。

 

  本稿は、経済月報2023年11月号の相談コーナーの記事を加除修正したものです。

 (主任コンサルタント 田中 美恵)

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