心豊かなゆったりとした時間の流れを醸し出す笹屋ホテル「豊年虫」

印刷

最終更新日: 2023年1月11日

 戸倉上山田温泉の笹屋ホテルは、この地で代々造り酒屋を営んでいた坂井家が1903(明治36)年に開業した日本で初めて「ホテル」を冠した旅館です。三千坪の敷地内には鯉が泳ぐ日本庭園や湯量豊富な大浴場「石の湯」と「木の湯」、旬の素材を使った日本料理が味わえる「竹亭」、本格的な四川料理が堪能できる「杏苑」等があり、心身共に豊かな時を過ごすことができます。
 

近代日本の旅館建築のモデルとなった旅館

 イチ押しは、ホテルの敷地に別棟としてある数寄屋造りの「豊年虫」です。かつて別荘と呼ばれていたこの別棟は、創設100年を迎えた2003年に文化庁から登録有形文化財に指定されたのを機に、8室の旅館「豊年虫」として開業しました。
 豊年虫とは蜻蛉のことで、昭和初期、文豪志賀直哉が笹屋ホテルに逗留中の出来事を基に執筆した短編小説の名にちなんで名付けられました。
 「豊年虫」にはさまざまな特長があり、その1つが、日本建築の伝統にホテルの手法を持ち込んだ設計です。出入り口に鍵付きのドアがあり、客室と客室の堺に壁を作り、個室であることが明確になっています。襖で仕切っていた1903年当時の建築としては非常に斬新なスタイルでしたが、その後、このスタイルが近代日本の旅館建築のモデルとなり、多くの旅館に採用されてきたと言われています。
 設計を手掛けたのは遠藤新。旧帝国ホテルを手掛けた著名な建築家フランク・ロイド・ライトに師事した最初の日本人建築家です。独立後もライトの思想を継承し、自然と共生する、美しく統一感のある建築物の創造に情熱を傾けたことで知られています。
 

庭園に囲まれた本格的な数寄屋造りの8室
 

自然と建物が調和した個性ある8室

 8室に共通する魅力は、落ち着いた座敷の広縁から眺める日本庭園です。風景はまさに一枚の絵画のようであり、自然と建物と人との一体感が醸し出され、設計した遠藤の思いが感じられます。また、8室それぞれに設計や建具の細かな意匠の違いがあり、これを楽しみに何度も訪れる人も多いといいます。さらに、どの部屋にも温泉の風呂を備えており、中でも「蘭の間」と「菊の間」は建築当時から常時源泉掛け流しです。
 

あえて「何もしない」ことで心と体を整える

 客室から眺める庭園との調和が生み出す安らぎと癒しを求めて、豊年虫では2泊から1週間ぐらいまで長期滞在する人も増えているといいます。
 志賀直哉もこの静かな空間の中に身を置くことで、さまざまな創作のアイディアが湧き出たと言われます。「調和のとれた空間で、あえて何もせずゆったりと過ごすことで心と体を整え、また日常に戻ってもらえたら嬉しい」と、坂井永一館主は語ってくれました。
 

「蘭の間」の本間は15畳と広く、格式高い造りが特徴だ。庭との調和と静寂が心と体を整えてくれる
 

 
 

 株式会社八光 笹屋ホテル

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233