改正高年齢者雇用安定法への対応<2022.2.15>

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最終更新日: 2022年2月15日

 20214月より、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が施行されましたが、そのポイントと人事制度再構築の考え方をまとめました。

1.改正高年齢者雇用安定法のポイント

 2021年4月1日の法改正では、従来からの65歳未満の高年齢者雇用確保措置に加えて、高年齢者の「就業機会」を確保する措置として、図表1の5つのいずれかを新設することが努力義務になりました。

 1~3は雇用による就業機会の確保ですが、4・5は雇用以外の方法による就業機会の確保になります。努力義務への対応として、高年齢者雇用を前提とした人事制度を検討したいという相談も増えています。以下に、検討の際の切り口を整理します

2.契約形態は雇用延長と再雇用

 高年齢者の雇用を維持・継続する際の契約形態は、(1)雇用契約の延長(定年延長または廃止)、(2)いったん退職してから再度雇用契約を締結して再雇用とする、の2つの方法がとれます。

 (1)の場合は、現役時代(60歳定年の場合の59歳以下を指す)と同じ役割の下で力を発揮して欲しいという、企業側の思いが伝わりやすい対応です。

 (2)の場合は、雇用契約の結び直しとなり、個別状況を踏まえて仕事や責任を見直すなどの場合に馴染みやすい対応です。

 (2)は、社員が定年により区切りを迎えることで、その後の働き方を選択する機会になります。また、再雇用の対象となる年数は、企業側が定年を何歳に定めるかにより変わってきます。

3.仕事内容の継続性はあるか

 仕事内容の継続性では、(3)現役時代と同様の仕事(役割・職務や発揮能力など)で、60歳以降の活躍を期待する場合と、(4)これまでの仕事と別の仕事を担ってもらう場合があります。

 (3)は、本人の意欲を維持しやすい対応です。一方で年齢とともに意欲や貢献度が落ちることも想定され、仕事の変更ルール(降格等)を定めておくことが肝要です。

 (4)は、管理職などの役職を外れても、これまでの業務経験を生かして、後輩指導・育成や技術の伝承といった役割に変更するケースなどが想定されます。

4.賃金水準は継続か引下げか

 賃金水準については、連続性を持たせるかを検討します。(5)70歳まで現役世代と同様の賃金制度で処遇する対応と、(6)定年など一定年齢をもって、賃金水準の見直しを図る対応が想定されます。

 (5)は、昇給のルール等が維持され、継続的に能力発揮するモチベーションにつながります。一方で、これまで再雇用制度等で賃金の引下げを行っていた企業では、大幅な人件費負担増となります(図表2)。

 (6)は、多くの企業で再雇用制度の下で行われてきた仕組みです(図表3)。賃金が下がることを踏まえて仕事内容や役割を変更する企業もあれば、同じ内容を継続している企業もあります。同一労働同一賃金の観点から、不合理な格差に該当しないかの留意が必要です。

 法改正を踏まえ、上記の2.契約形態、3.仕事内容、4.賃金水準の3つの切り口を整理し、(1)~(6)を組み合わせて自社の意向や実情に即した人事制度を検討してください。当研究所では人事制度構築などのご支援を行っております。お気軽にご相談ください。

 本稿は、経済月報2022年2月号の相談コーナーの記事を加除修正したものです。

(主席コンサルタント 岩下宏文)

 

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