所有権留保特約つき売買契約書とは<2021.9.28>

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最終更新日: 2019年9月6日

 取引先に商品を販売する売買取引をしている場合、取引先の業況が順調で、支払いが滞りなく行われているときは問題ありませんが、いざ、滞りだしたというときには、納めた商品を取り戻し、少しでも損失を減らしたいと思うのは当然でしょう。しかし、そこで問題になるのが、その商品の所有権です。 

所有権留保とは 

 所有権留保とは、売買契約で売り主が売買代金を担保するため、代金が完済されるまで引き渡した目的物の所有権を留保することです。例えば、自動車などの割賦販売では所有権が留保されており、割賦販売の代金支払いが終るまで、買い主は自動車を使用収益することはできますが、処分することはできません。また、買い主が破産したなどで割賦販売代金を支払えなくなった場合でも、所有権を留保している売り主は保護されます。 

 ただ、所有権留保は代金債権担保の目的で行われるため、この目的と関係がない場面では買い主が真の所有者として取り扱われることがあります。判例では、所有権留保中の自動車による交通事故については、売り主は賠償義務を負わないとしています。

所有権留保特約を契約書に明記する

  所有権を留保するには、売買の取引基本契約書に所有権留保特約を明記することが必要になります。仮に、売り主を甲、買い主を乙とした場合、次のような条項が1つの案となります。 

第〇条(所有権留保特約)

 商品の所有権は、乙が甲に対し売買代金の全額を支払うまでの間、甲に留保されるものとする。

 ただ、所有権留保特約をつけたとしても、買い主が、代金を支払う前にその商品を第三者に転売してしまう可能性はあります。このため、転売などを防ぐために、売買代金を全額支払うまで、その商品の処分を禁じておく条項を設けておくことも、同時に必要になります。

 商品にプレートやステッカーなどを貼る

 それでも買い主が第三者に転売してしまった場合、その商品の所有権が買い主にないことを知らない第三者は、善意取得で所有権を取得することができます。こうした事態を防ぐため、売り主は、その商品が自社の所有物であることを示すためのプレートやステッカーなどを貼り、その商品が転売元の所有物ではないことを第三者に分かるようにしておく必要があります。

 取引先の業況は、いつどう変わるか分かりません。売買取引を始めるに当たって業況が良いからといって安心せず、取引開始時に基本契約書を作成する際には、先々のことも考えて所有権留保特約をつけることをよく検討していただければと思います。

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