各社に適した人事制度への見直しをお手伝いします <2021.3.10>

印刷

最終更新日: 2021年3月10日

 長野経済研究所では経営相談メニューの中で、人事制度導入および既存制度再構築のコンサルティングを実施しています。

 人事制度を取り巻く環境は、働き方改革関連法案への対応やコロナ禍での就労形態変化、日本型雇用の見直し機運の高まりなど、大きく変化しています。人事制度の見直しを検討する企業が増えている中、当研究所のコンサルティングの事例から、評価制度の見直しを中心に取り組みをご紹介します。

3つの切り口での現状分析で認識を共有

 人事制度を見直す場合、まず人事体系・賃金制度・評価制度などの現状分析を実施します。分析の作業と結果報告を通じて、会社と当研究所で課題を整理していきます。 

 本事例では、既存制度の良い部分や定着している部分を把握しながら、課題や改善点を整理していきました。具体的には、社員意識調査や各部門長へのヒアリング結果も活用しながら、体系・賃金・評価の3つの切り口から、幅広く多くの課題を抽出しました。

 現状分析の作業を通じて経営者の意向を把握すると共に、見直しに携わるメンバーと当研究所で、認識を共有することが重要になります。

課題の優先順位と方向性を整理します

  人事制度の見直しに際しては、会社ごとに多くの制約があります。例えば、人員構成、人件費負担上限、既存制度の定着状況、役職者の評価スキルなどです。

 さまざまな制約のため、現状分析で抽出した課題の全てに対応するのは困難です。課題に優先順位をつけ、ここは見直したいという事項を絞り込むことが必要です。

 本事例では、経営者の方針や意向を確認しながら、優先して対応する課題を絞り込み、対応の方向性を整理しました。絞り込んだ課題をベースに、約8カ月掛けて人事制度全体を見直していきました。

 本コラムでは、課題となるケースが多い、評価制度への対応に絞りご説明します。

評価制度は、自社に合わせた設計を行います

 評価制度の仕組みや評価シートは、会社ごとに千差万別です。他社の制度や書籍などの制度をそのまま導入しても、運用ができなければ狙った効果は得られません。本事例では、既存制度の仕組みと運用状況の確認に十分な時間を掛けました。

 まず、全員分の前期評価資料の提供を受け、目標内容や評価結果、評価コメントなどを確認しました。その後、前期結果のフィードバック面接に同席し、評定者からの説明内容や被評価者の反応を観察することで、定着状況等を確認しました。

 事例の会社では、成績・能力・情意の3つの切り口の評価制度を使用していました。このうち、成績評価は目標設定カードにより実施し、期初に上司・部下で目標設定を行い、毎月の面接で進捗を管理、翌期には結果のフィードバックも実施されており、一連の流れは定着していました。そのため、成績評価の仕組みはそのまま継続し、能力と情意に関して見直しを行いました。

 見直し前の既存評価では、能力評価は基準が抽象的で、評価する項目は全等級で同一でした。情意評価は、等級ごとのウエイトに差をつけていましたが、評価項目は全等級同一でした。どちらの評価も、会社が各等級にどんな役割を求めているか具体的に示されていないため、評価根拠の説明が難しく、結果に差が付きにくい状況にありました。

 このため新評価制度では、「能力面」は技能、リーダーシップ、経営的思考など、「情意面」は規律性、協調性、チャレンジなど、それぞれ5項目の評価項目を設けました。また、役職者への期待を分かりやすく示すために、役職者と非役職者で異なる評価項目を選定しました。これらの評価項目は、定着状況や経営環境、会社方針などに合わせて、年度毎に見直しを検討していく予定です。

 また、評価全体のウエイトは、上位等級ほど仕事の「成績面」を高く評価する仕組みとして、メリハリをつけました。さらに、評価のしやすさや結果の納得性を高めるため、等級ごとに求める主な役割・行動・技能を部門ごとに例示して、評価の尺度として使用することにしました。

運用開始後の見直しにより定着を図ります

  人事制度は、運用開始がゴールではありません。制度の運用・定着が重要となります。

 特に評価制度では、導入後に運用状況に応じた見直しが必要です。プレ運用期間を設け、期間内に不具合を修正しながら制度の定着を図ることが有効です。

 事例の会社でも、プレ運用期間を設け、制度の理解と定着が進むよう対応しています。従来は実施していなかった評価者研修にも取り組み、評価の目線を合わせて、評価プロセスを人材育成に生かすべく取り組んでいます。

 人事制度は、仕組みや内容が自社に適していることが重要です。本事例のように、会社の意向や現制度の定着状況、社員の意識などを勘案しながら、自社に合わせたオリジナルな制度としていくことが有効でしょう。

 当研究所では人事制度見直しだけでなく、評価者研修やアフターフォローにもご対応します。お気軽にご相談ください。

 本事例の詳細につきましては、経済月報2021年3月号の「コンサルティングの現場から」を御覧下さい。

 (主席コンサルタント 岩下宏文)

このページに関するお問い合わせ

経営相談

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233