コロナで加速する消費のEC化~地域の特色を生かして域外需要を獲得~<2021.3.4>

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最終更新日: 2021年3月4日

新型コロナウイルス感染拡大による消費行動の変化

 新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活環境・ライフスタイルはさまざまな面で大きく変化しています。その一つに、消費のEC(電子商取引)化の加速が挙げられます。ECとは、Electronic Commerceの略で、主にインターネット上でモノやサービスを売買することを指します。外出自粛や人との接触を極力抑えることが求められている中、実店舗からインターネットへと消費行動がシフトしてきています。
 情報通信技術の発展やスマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、新型コロナウイルス感染拡大前から、EC市場は拡大してきています。経済産業省の「電子商取引実態調査」によれば、消費者向け物販系EC市場規模は、2014年から19年までの5年間で年平均8.1%の増加を続け、約1.5倍に拡大しています。また、19年には店頭販売等を含めた全ての商取引におけるEC市場規模の割合(EC化率)は6.8%に達しています。
 
図表1で全国に緊急事態宣言が発出された20年4月以降の消費動向をみてみると、19年の消費増税による影響があった9月を除いて、ECによる消費は前年同月を10%程度上回る増加が続いている一方、小売業全体は概ね前年同月と同水準かそれを下回る動きとなっており、EC化の加速がみてとれます。
 

図表1 小売消費動向の推移(前年同月比)

 

EC市場拡大の恩恵は東京・大阪に

 図表2は、販売形態(店頭・インターネット)ごとの小売販売額の都道府県別シェアを示しています。店頭販売の場合、消費者は実際に店舗を訪れて買い物をする必要があるため、販売額の都道府県別シェアは、人口の規模に大きく影響を受けます。
 しかしながら、インターネット販売の場合、例えば消費者が長野県に住んでいても、東京の大手小売店が販売する低価格な商品や、地方には無い有名店のブランド品を、家に居ながらにして購入することが出来ます。つまり、インターネットによる小売販売額の都道府県別シェアは、人口規模の影響をそれほど受けません。実際、価格的に優位性のある事業者や、ブランドショップを多く有する東京都と大阪府は、店頭販売でのシェアは2割程度に過ぎないものの、インターネットによる小売販売額は5割以上のシェアを占めています。これは16年時点のデータですが、この状況が変わっていないとすれば、EC化の進行は長野県を始めとする地方の経済にとって、負の影響をもたらすことになりかねません。

図表2 小売販売額 都道府県別シェア(2016年)

地域の特色を生かして域外需要を獲得

 地方においてEC化の恩恵を享受するためには、“その土地を訪れなくても欲しい物が買える”ことに着目し、域外居住者に、他に負けない品質を誇る地域の特産品を購入してもらうという視点が重要です。例えば、図表3のとおり、北海道ではカニ・イクラ等の「鮮魚」が、兵庫県では神戸牛等の「食肉」が、インターネット販売において、店頭販売を上回る高いシェアとなっています。同様に、長野県では「野菜・果物」がインターネット販売において比較的高いシェアとなっています。
 「鮮魚」、「食肉」、「野菜・果物」といった生鮮食品は、実際に手に取って品質を確かめてから購入したいと考える消費者が多いと思いますが、インターネットでは実際に手に取って確認することは出来ません。それでも北海道や兵庫県、長野県の生鮮食品がECで人気である理由は、そのブランド力と期待通りの品質にあるのではないでしょうか。
 こうしたことから、コロナで加速するEC化をチャンスと捉え、長野県の名産である品質の高い野菜や果物等を生かして域外需要を取り込むことが重要になります。具体的には、ECサイトへの積極的な出店やWeb広告の活用等によるプロモーションの強化が有効であると考えられます。

図表3 小売販売額(産業小分類) 都道府県別シェア

 

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