子どもの貧困問題~ひとり親の就労支援の充実を~<2021.2.2>

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最終更新日: 2021年2月2日

子どもの約7人に1人が「貧困」

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、日本の2018年における子どもの貧困率は13.5%となっており、子どもの約7人に1人が貧困の状態にあります。「子どもの貧困」とは、その国の文化水準・生活水準の標準に至らない状態を指すものです。これらの子どもは、学習・進学などの面で不利な状況に置かれており、標準的な所得水準の家庭の子どもに比べて学力が低い傾向にあると言われています。

ひとり親世帯で高い貧困率

 世帯類型別の貧困率をみると、大人が2人以上の子育て世帯では約1割ですが、ひとり親世帯では約5割となっています。図表1で他の先進国(G7)と比較してみると、日本の子どもの貧困率は平均的な水準ですが、ひとり親世帯に限ってみると、7か国中、最も貧困率が高くなっています。
 15年の国勢調査によると、日本のひとり親世帯の93%が母子世帯です。そこで、母子世帯の母親について、正規職員・従業員の割合を図表2で見てみると、40歳未満の年齢層において、同世代の男性や女性を下回っていることが分かります。このような就労環境が、ひとり親世帯の貧困率が高い原因の一つとして考えられます。母子家庭の母親は「子育てと正規社員としての勤務の両立が難しいこと」や「結婚や出産を機に退職した後、正規社員として復職することが難しいこと」等の理由から正規社員として働きづらい環境にあるものと考えられます。

図表1 先進国における貧困率(2016年時点の各国の最新値)

 

図表2 正規職員・従業員の割合

コロナ不況による雇い止めの影響

 子どもの貧困率は、12年の16.3%をピークに、15年13.9%、18年13.5%と低下してきています。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気・雇用環境の悪化に伴い、子どもの貧困問題は深刻化する恐れがあります。雇用環境について、特に非正規雇用者数は、図表3のとおり全国に緊急事態宣言が発出された20年4月以降、前年同月を60~130万人下回る状況が続いています。経営が悪化した企業において、非正規の雇い止めの動きが出ているものと考えられます。こうした雇い止めの動きによって、非正規社員の割合が高いひとり親世帯において、子どもの貧困率がさらに上昇してしまうことが懸念されます。

図表3 雇用者数(正規・非正規) 前年同月比

地方自治体による「子どもの貧困対策計画」

 ひとり親世帯の貧困率が高く、ひとり親の非正規割合が高いことを踏まえると、子どもの貧困問題への対策では、就労支援に重点的に取り組むことが求められます。
 国は、子どもの貧困問題への対策として、19年11月に「子供の貧困対策に関する大綱」を策定しています。この大綱では、4つの重点施策として、(1)教育の支援、(2)生活の安定に資するための支援、(3)保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、(4)経済的支援、が掲げられています。(3)の就労支援については、改善すべき指標として、前述の「母子世帯の母親の正規職員・従業員の割合」が掲げられており、施策の推進を通じた母子家庭の母親の就労環境改善が期待されます。
 また、市町村に対しては、19年9月の法改正により、子供の貧困対策についての計画策定が努力義務として課されており、県内では20年6月8日現在、11市町村が子どもの貧困対策計画を策定しています。
 県内市町村の貧困対策計画の内容をみると、「資格取得や学び直しの支援」、「ショートステイの充実による仕事と育児の両立支援」、「就職相談体制の充実」、「ワークライフバランスについての意識啓発」といった取り組みがみられ、就労支援に資する内容となっています。今後、これらの施策が着実に実行されていくことが重要です。

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