長野県佐久穂町産プルーンのブランド化に向けた取り組み<2021.1.25>

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最終更新日: 2021年1月22日

出荷量全国1位を誇る長野県産プルーン

 長野県に住んでいると果物が豊富な地域だと実感する機会が多いです。では、長野県の代表的な果物といえば、何を思い浮かべるでしょうか。私は生食のプルーンを挙げたいと思います。プルーンはビタミンなど栄養が豊富な果物で、特にカリウムや食物繊維を多く含みますが、一般的にはドライフルーツが有名です。生食のプルーンを選ぶのは、何も意外性を狙ったものではありません。農水省の特産果樹生産出荷実績調査および果樹生産出荷統計によると、長野県が出荷量の全国シェア50%超を確保しているのは、プルーンやクルミ、ネクタリンなどです。全国シェア50%を超える果樹は、和歌山県の梅や沖縄のパイナップルなど一部の果物に限定されていて、全国的にも有名な長野県のりんごやぶどうも全国シェアは3割未満にとどまっています。
 こうした全国シェア50%超を誇る長野県産プルーンのブランド化に向け、南佐久郡佐久穂町の生産者と東京の老舗果物販売業者「新宿高野」がコラボして取り組んでいる内容を紹介したいと思います。

動き出した新宿高野との取り組み

 佐久はプルーンの産地化が日本で最初に行われ、現在、有数の産地となっています。日照量の多さや寒暖の差などの気象条件が適していることに加え、長野県開発品種を中心に多品種栽培を展開している地域です。
 佐久地域の中でも佐久穂町は、人口1万1,000人前後の小さな町ながら、多数のプルーン生産農家を抱え、10種類以上の品種を栽培しています。一方、新宿高野は2020年に創業135周年を迎えた老舗であり、日本の果物の歴史を語る上で外すことのできない果物店です。
 両者の交流は18年5月、佐久穂町から長野県の東京事務所に出向していた職員が新宿高野にアプローチしたことに始まります。その後の展開は早く、同年秋には新宿高野担当者が佐久穂町を視察し、その後、新宿高野本店での生食プルーンの試食会が行われ、品質や味に対して高い評価を得ることに成功しました。この高評価を契機に佐久穂町の役場と生産者は、19、20年と新宿高野本店での試食会を継続、さらには店頭販売や銀座NAGANOでのコラボイベントを開催するに至りました。
 

ブランド化へのステップ

 このように佐久穂町産プルーンがブランド化に向けて好スタートを切れた理由としては、(1)新宿高野が数年前から全国の各産地とのコラボを通じた支援を行っていたこと、(2)生食のプルーンが全国的にはあまり認知されてこなかった商品であること、(3)佐久地域のプルーンが持つ味や品質が果物に精通する人たちに認められる水準だったこと、などが挙げられると思います。
 しかし、ブランド化のためには、知名度の向上とそれを裏付ける品質やパッケージデザイン、安定した生産体制などが必要となります。そのために、まず商品を新宿高野の店頭に並べてもらうことで、地名度向上の仕組みが出来上がりました。この効果を高めるため、佐久穂町×新宿高野のコラボPR動画を作成したほか、今後、ブランド化に向けて糖度や酸度の基準設定や統一したパッケージのデザイン検討、ブランド名称の命名などを進めていく計画です。特にコストがかかるパッケージデザインや化粧箱などについては、長野県の補助金「地域発 元気づくり支援金」を使って進められています。
 

安定した生産体制の構築が課題

 ブランド化を進める上での課題は、安定した生産体制の構築です。生産者の高齢化と減少が続く中において、プルーンの栽培面積は急激に減少し、長野県の出荷量も、08年の1,750.3tから17年の1,478.2tへと10年間で16%も減少しています。希少性が高くてもそれが販売者・消費者の手元に届かなければ、ブランド化への道のりはおぼつかなくなります。かといって、ただ数を集めるだけで玉石混交となれば、自分たち自身でそのブランドに傷をつけてしまいます。まずは、プルーンの品質基準を厳守しつつ、そうした産品を栽培できる農家の育成と確保です。そのために、各種補助金の活用やブランド化研究会の発足、果実非破壊測定器の導入検討などが進められています。
 稼げる農業は、人やモノを地域に呼び込み、人口増加や耕作放棄地の減少などの好循環をつくりだすことも期待出来ます。始まって3年足らずの取り組みであるが、今後もその活動に注目していきたいと思います。

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