感染症によるパンデミック対応計画策定のポイント

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最終更新日: 2020年5月22日

 新型コロナウイルスよる感染症が世界的規模で依然拡大し続けています。本稿執筆時点(2020年5月22日)では緊急事態宣言は一部地域を除き解除されましたが、有効なワクチンが完成するまでは、予断をゆるさない状況が今後とも継続すると予想されます。このような中、既に生じている影響に加え、今後発生が見込まれるリスクにも対応した計画を策定しておくことが重要です。そこで、以下にポイントをまとめてみました。

 ヒト:まずは要員の確保

 感染症の場合、地震・火災と異なり建物・設備への影響はないので、「人(従業員)」の確保が最も重要です。感染予防の対策としては手洗いの励行、事業所の消毒、出社時の検温等の健康管理の強化などがあります。事業を継続するための対策としては、(1)複数班による交代勤務の実施、(2)在宅勤務(テレワーク)の実施、(3)一人の人員が複数の業務をこなせるようクロストレーニングの実施、などが有効です。対策策定にあたっては、従業員のうち、約40%の欠勤を想定するとよいでしょう。

 モノ:サプライチェーンの確保

 パンデミックは世界的規模で同時多発的に起きることから、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の確保も重要になります。この点については、日頃からの取引先との協議や相互支援の検討、入手困難な物資の在庫積み増しなどの対策が必要です。取引先を分散しておくことも事前に検討すべき課題です。

カネ:資金繰り

 パンデミックの場合、事業を縮小したり休止する期間が長期にわたります。その間、従業員の給与や諸経費の支払いなどの運転資金が必要となります。少なくとも2ヵ月間の事業停止を想定し、必要な資金を把握し、自社内での資金の積み立てや、借入のための対策を考える必要があります。
具体的なリスク毎の対策については、以下の表を参考にして下さい。 

 

                                                              対  策  例

                                   事前

                             事後

要員の確保

・出社時の検温
・手洗い、入室時の消毒
・感染者発生時の対応
・交替勤務、クロストレーニングの実施
・テレワーク環境整備
・休業補償の検討

・時差出勤
・在宅勤務(テレワーク)
・複数班による交代勤務
・不要不急の会議・業務の休止
・会社周辺の宿泊施設確保

サプライチェーンの確保

・取引先と緊急時の対応協議
・取引先の分散化
・他企業と相互支援検討
・入手困難な物資の在庫積み増し

・他企業との相互支援実施
(可能な場合)
・代替企業への発注
・生産計画の見直し

運転資金

・当面の資金確保(預金等)
・緊急時に備えた金融機関との情報交換

・保険の検討

・借入、補助金の活用
・保険の活用

その他

・マスク・消毒液の確保
・業務停止時の免責条項確認

・政府の発表、感染状況等情報収集
・中核事業の継続に経営資源集中

  トップダウンによるリーダーシップの強化

 パンデミックへの対応には、社長の強いリーダーシップが必要です。従業員やその家族、お客様の生命を守ることを基本方針とし、各部門の責任者や産業医など外部の専門家の助言も参考にして対応計画を策定して下さい。また、実際の現場では、事業の完全な継続が困難になります。社会的要請、自社の経営維持、従業員の雇用確保等の点から、非常時でも継続すべき自社の「中核事業」を特定し、その事業を継続する責任が経営者には求められます。パンデミックへの対応はまさにBCP(事業継続計画)といえます。BCPを策定済であってもパンデミックのリスクシナリオがない場合は、追加を検討してください。

 松本経営相談室 上席コンサルタント 牛山

 (本情報は、経済月報20205月号の「感染症によるパンデミック対応計画策定のポイント」に掲載した記事を加筆修正したものです)

 

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