賃金体系を見直す際のポイント <2019.9.12>
初任給を引き上げて若手社員への配分を増加させたり、シニア層の処遇を見直すなどの動きに伴い、年功的な賃金体系を見直す企業が増加しています。見直しに際して留意すべきポイントには、以下のようなものがあります。
現状分析で改定の目的を明確化する
見直しは、現行賃金の状況と課題を認識することから始めます。分析項目としては「総人件費の水準」「年齢・職種・男女別の賃金水準」「同業他社や地区内企業との比較」「賃金カーブの状況」等があります。
現状把握を行った上で、経営会議や社内プロジェクト会議を通じ、例えば「職務中心の賃金体系に変更する」「20代の水準を重点的に引き上げる」といった、具体的なイメージを固めていきます。
現状の課題に基づき、改定の目的を明確にして、どこを変えるのか絞り込むことが最初のポイントです。
基本給は複数の要素を組み合わせる
賃金体系の中心となるこ基本給を、どのような仕組みにするかが、次の重要なポイントとなります。
以前は、年齢給や社員の持つ能力等を基準とする能力給が主流でしたが、バブル時代以降の成果主義の流れの中で、仕事を基準とする役割給や業績給などの割合も増加してきました。どの仕組みにもメリット・デメリットがあり、万能な仕組みはありません。
最近は雇用環境や社員の多様性を反映し、能力に職務(役割責任)や業績を加味するなど、それぞれのメリットを生かし、複数の要素を組み合わせてオリジナルな基本給を設計する企業が増えています。
社員の階層に応じて、適用する要素を変えるのも効果的です。若手など一般職層は能力重視、中堅の指導職層は能力+役割、管理職層は業績を反映するような設計です。また、基本給の要素以外では、等級内の昇給幅に着目し、初・中級はレンジレート・上級はレンジレートとして、昇給の有無を変える例があります。
資金配分の見直しで賃金カーブを修正する
厚生労働省の賃金構造基本統計調査等をみると、若年層と中高年層の格差が縮小する方向にあります。人手不足による採用難等で若年層の給与が上がり、賃金カーブが早期に立ち上がる形となってきています。
賃金の原資には限りがありますから、全体の資源配分見直しにより賃金カーブを修正することもポイントです。例えば、生活維持を主たる目的とする昇給は35歳前後をピークとし、以降は役割と実績に応じて格差をつける賃金カーブを設計する企業もあります。
各社状況に適した納得性の高い制度をつくる
最近は、専門性の高い人材を確保するために、「特定職種の賃金を引き上げる」「採用時から賃金水準に差をつける」といった取り組みもみられます。
どんな賃金体系とするかは、企業が何を重視するかにより変わります。他社の真似をするのではなく、かつ社員に分かり易く納得性の高い制度とすることが、大切なポイントです。
人事・賃金制度についてのご相談をお受けしています。お気軽に当研究所へご連絡下さい。
本稿は、経済月報2019年9月号の相談コーナーで紹介した内容に加筆・修正したものです。
(主席コンサルタント 岩下宏文)