労働時間の状況の客観的な把握の義務付けへの対応<2019.5.31>

印刷

最終更新日: 2019年5月31日

 労働安全衛生法の改正によって、2019年4月より、原則として全ての事業者に対して、労働者の労働時間を客観的に把握することが義務付けられました。この改正は、事業者が労働者の健康確保を図る観点から行われ、その対象者には、管理・監督者(以下、管理職といいます)及びみなし労働時間制が適用される労働者(裁量労働制や事業場外みなし労働時間制の適用がある労働者)も含まれます。

客観的な記録による把握とは

 ここで言う「労働時間の状況の把握」とは、労働した時間を把握するだけでなく、「労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握すること」とされ、社員や管理職の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握することが求められています。労働時間の状況の把握の記録は3年間の保存が義務付けられていますので注意してください。

 把握する方法は客観的な記録によるものでなければならず、原則として、

タイムカード

・パソコン等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録

・事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む)の現認

 等の方法やその他の適切な方法によるとされています。

自己申告制の場合の留意点

 労働時間の状況が「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」においては、その他の適切な方法として、社員の自己申告による把握(以下、自己申告制といいます)も認められています。ただし、この「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは、「労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合」であり、前述の客観的な方法で把握ができるにもかかわらず、自己申告制のみを採用することは認められていません。このため、この取り扱いは非常に限定的といえます。

 また、自己申告制の場合に講ずべき措置として、対象となる社員や管理職に対して適正な申告や運用について十分に説明すること、自己申告と実際の労働時間の状況が合致しているか必要に応じて実態調査を行うこと、申告できる労働時間に上限を設け、上限を超える申告を認めない等適正な申告を阻害する措置を講じないこと、等が求められています。自己申告による把握を当事者任せにすることなく、会社として運用状況をチェックする体制を整えておくことが必要です。

社員への通知義務

 こうした労働時間の状況の把握は社員の健康管理のために行うものであり、時間外労働・休日労働の時間が1ヵ月当たり80時間を超えた社員に対して、その時間外労働・休日労働時間数を速やかに通知することが義務付けられています(給与明細への記載も認められています)。該当する社員には産業医による面接指導の申出を促し、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望ましいとされています。

 

 本稿は、経済月報2019年5月号の相談コーナーで紹介した内容に加筆・修正したものです。

 

 

 

 

 

 

このページに関するお問い合わせ

経営相談

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233