これからの企業経営と「持続可能な開発目標(SDGs)」への取り組み

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最終更新日: 2018年10月1日

 新聞等で最近よく目にするSDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goalsの略で、2015年9月、国連の「持続可能な開発サミット」において加盟193か国が採択した30年までに達成すべき国際社会共通の目標のことです。以下その概要と注目されている理由、および今後予想される企業経営への影響についてまとめてみました。

SDGsはすべての人々に目標実現に向け参加を求める

  SDGsは、貧困・飢餓の撲滅、健康・福祉や教育の促進、エネルギーや安全な水の確保のほか、女性の社会進出や、働きがいと経済成長の推進、自然環境の保全、気候変動対策など17のテーマ(大きな目標)と169のサブテーマ(具体的なターゲット)で構成されています。 

 これらの目標(Goals)は、途上国のみならず先進国にとっても目指すべき目標であると同時に、企業や市民社会などすべての人々に目標実現に向け参加を求めています。つまり、取り組むべき課題についてSDGsといういわば“共通言語”を使うことにより、生まれた国も背景も違う人々や企業が力を合わせ、一層大きな成果を上げていこうという考え方です。

新たなマーケットの拡大と高まる投資家の関心

 SDGsが注目されている理由はいくつかありますが、その一つは、そこに大きなビジネスチャンスがあるからです。SDGsという共通目標の下で世界が同じ方向にかじを切れば、自ずとその方向に新たな産業やマーケットが広がり、そこに携わる企業の成長にもつながります。ある試算によれば、この取り組みにより年間最大12兆ドル(約1,300兆円)の経済価値を持つ市場が生まれ、30年までに3.8億人の雇用を創出する可能性があると言われています。

 もう一つは、ESG投資に対する投資家の関心の高まりがあります。ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を評価・選別して行う投資のことで、短期的な業績だけではなく、中長期的企業価値、つまりSDGsに貢献している企業こそが成長企業として投資の対象になるという考え方に基づいています。投資規模は年々拡大し、世界のESG投資残高は16年に約22.8兆ドル(約2,500兆円)と、全運用資産残高の1/4を占めるまでに拡大しています。

本格化する経済界の取り組み

 国内では、世界最大の公的年金機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、15年にPRI(国連が定めた責任投資原則)に署名したことを契機としてESG投資が増加し、17年3月には国内の全投資額に占めるESG投資の割合は35%にまで高まっています。

 また昨年、経団連は会員企業向けの行動指針「企業行動憲章」にSDGsの理念を取り入れるよう改定し、事業活動での配慮を求めているほか、日本証券業協会と全国銀行協会がそれぞれSDGsの推進を発表する等、経済界での取り組みが本格化しつつあります。

世界の流れを見据え持続的な成長を目指す

  規模の大小、上場・非上場に関わらず、地球環境や社会問題の深刻化を自らの課題と捉え、それらを考慮して事業を進めていくことは社会的責任を果たすだけでなく、新たな事業領域を見出したり事業のあり方を見直す契機となり、企業自身の成長や企業価値の向上につながっていきます。既に動き始めた大手企業によるこれらの活動は、サプライチェーンの中で、要求事項やニーズ・期待となって、川上から川下までそこに関わる中小企業の活動に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。世界、あるいは世の中の大きな流れから取り残されることの無いよう、先を見据えた経営のかじ取りが求められます。

 また、これからは企業のSDGsへの貢献についての対外的な情報発信・提供も一層重要となります。こうした情報発信は、資本市場における投資判断材料としてだけでなく、取引先や顧客など社外からの評価を高め、企業及びその製品やサービスの一層の信頼性向上につながります。こうした情報発信が、「良い会社・働きがいや誇りを持てる会社」として就業先選択時の評価基準になり、地方の中小企業においても意識の高い優秀な人材確保につながった事例が出てきています。

 経営相談部 上席コンサルタント 澤井 深

 (本情報は、経済月報2018年6月号の「相談コーナー」に掲載した記事を加筆修正したものです)

 

 

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