事業プロセスとISO活動との一体化

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最終更新日: 2018年2月13日

 ISO9001規格が2008年版から2015年版へ改訂された背景には、旧規格においてISOマネジメントシステムの構築・改善が重視されるあまり、ISO活動が本来の事業プロセス(目標の計画策定や進捗管理、人材育成計画、経営会議等)と乖離し、別の活動として進められたことにより、「ISO活動の形骸化・マンネリ化」や、「マネジメントシステムのダブルスタンダード化」といった弊害が生じていたことへの反省があります。改訂の狙いをしっかりと捉え、事業に活かせるISO活動とするためのポイントを以下にご紹介します。

事業戦略とISO目標のベクトルの一致

 経営者の皆さんが事業戦略を練る際には、まず会社を取り巻く内外の状況・課題を把握し、更にお客様のニーズ・期待が何なのかを明確にした上で戦略決定しているのではないでしょうか。ISO新規格では、新たな要求項目としてこれと同じ取り組みが求められています。したがって、事業戦略を実行計画に落とし込む際の指標の中に、品質目標(売上増加・収益増加のための不良率削減等)を組み入れ、具体的な目標値・実施策を設定すれば、本来の事業計画の中にISO活動を組み込むことができます。これにより事業戦略とISO目標のベクトルが一致し 、ISO活動も形骸化することなくPDCAを回すことができるようになります。

ISO活動の目的の明確化

 また、ISO活動によって具体的に何を実現したいのかを明確にする必要があります。例えば「品質レベルを上げて競争力を高める」とか「社内生産管理体制を強化する」といった目的を掲げ、社員全員がそれに向かって取り組むことで、より具体的かつ実効性のある活動となります。ISOが目指す目標や管理方法はその目的を達成するために有効な取り組みなのかという判断基準を持つことも大切です。会社の仕事はISOのためではなく、事業目的達成のために行なっていることを忘れないことも重要でしょう。

経営者のリーダーシップの発揮

 いかにしっかりとしたISOのしくみができていても、管理責任者や担当者に任せたままでは、ISO活動が事業から孤立してしまうでしょう。それを防ぐためには経営者が自ら経営方針や組織の課題をメンバー全員に伝え、課題解決に向け役割と責任を果たすよう働きかけることが重要です。管理責任者や部門責任者には十分な権限を与え、その活動を支援することも有効でしょう。また、品質方針及び目標の策定、進捗確認、内部監査、マネジメントレビューを、リーダーシップ発揮の重要な機会として捉え、経営者が積極的に関与することも大切です。

本来業務にISO活動を織り込む

 コンサルティングの現場で「マニュアルではそうなっていますが実務ではこうやっています」「実務上必要ではないがISOで決められているからやっています」という言葉をよく耳にします。この機会に自社のISOマニュアルの内容や作業手順、使用する書式が、普段の仕事に役立っているか、本当に必要なのかを一つ一つチェックしてみて下さい。もしそれがISO活動のためだけの作業や、書式であるとすれば、むしろ積極的に廃止し実際の仕事のやり方や使用している書式をISOに取り入れていくことをお勧めします。本来の事業プロセスの中にISO活動を織り込むことでダブルスタンダードの解消と業務の効率化のみならず、社員のモチベーションの向上にもつながります。

まとめ

 以上のようにISO活動を事業に活かすためには事業プロセスとの一体化が不可欠です。規格改定を機に、是非ISO活動をより実効性のあるものとし、経営の有効なツールとして活用していって下さい。

 

 経営相談部 上席コンサルタント 澤井 深

 (本情報は、経済月報2017年6月号の「相談コーナー」に掲載した記事を加筆修正したものです)


   

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