約120年ぶりに改正された民法

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最終更新日: 2017年8月14日

   民法(債権関係)を改正する法律が、平成29526日の衆議院本会議で可決・成立し、同年62日に公布されました。改正は約120年ぶりとなり、施行は、原則として公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。改正が多岐にわたり、かつ、現行法における実務とは異なる内容の改正もあることから、その対応や準備のため3年という期間が設けられています。

 今回の民法改正で注目される改正項目として、「消滅時効」「法定利率」「保証」「定型約款」などがあげられます。それぞれ主な改正点は次のとおりとなっています。

 「消滅時効」

 現行法は、債権の消滅時効期を原則10年としています。しかし、飲食代は1年、弁護士報酬は2年、工事代金は3年などと、業種によって消滅時効の期間はバラバラで、その根拠が曖昧なものもありました。このため、改正民法は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」という主観的起算点と、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」の客観的起算点の2本建てのルールとなりました。ただし、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、客観的起算点の10年間を20年間とする例外的扱いが規定されています。

  また、現行法の時効障害事由である「中断」「停止」は、「更新」「完成猶予」に用語が改められました。

「法定利率」

 現行の法定利率は、民事が年5%、商事が年6%となっており、社会一般の金利水準に比べやや高いといわれていました。そのため、改正民法施行時には年3%とし、商事法定利率は廃止することとしました。また、その後は、3年毎に金利を見直す変動制が採用されました。

「保証」

 事業用の貸付金などに関する高額の保証責任が発生すると、個人保証人の生活を破綻させてしまうようなケースがありました。このため、改正民法は、個人保証人の保護のための規律が新設されています。具体的には、保証意思宣明公正証書による保証意思の表示や保証契約締結時の情報提供義務、保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務などです。

「定型約款」

 現行法では、約款についての規定がありませんでした。そこで、改正民法では、一定の約款を「定型約款」と定義し、そのルールを決めています。具体的には、定型約款は、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう」と定義されています。また、定型取引とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう」とされています。したがって、事業者間の取引はその多くが特定の者を相手方としているため基本的には定型取引には該当しないと考えられます。つまり、定型約款は、消費者などの不特定多数の者を相手方として行う取引に使用する約款であり、その典型例は、宿泊約款や旅行約款、保険約款、預金規程などとなります。

 この定型約款の内容についての同意や内容の表示についてなど、詳しい内容については8月号の相談コーナーで紹介しています。是非ご覧ください。

 今回の民法改正は、インターネット取引の普及など、社会・経済の変化への対応や国民にとって分かりやすいルールの制定が背景となっています。ここでは、改正のほんの一部しか紹介していませんが、実務上施行までに対応が必要な項目が数多くあるとみられます。自社に関わる民法改正の実務対応を洗い出し、施行に向け準備と対応を進めることが重要になります。

 

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