賢い変革はできないのか ~居心地の良さからの脱却~

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最終更新日: 2017年1月10日

 今の経済そして生活に不満を持たない人は少ないと思いますが、不満を持っていても「思い切って変革をしよう」「世の中の仕組みを大きく変えていこう」と一歩踏み出す人は数少ないと思います。
 それは、今の慣れ親しんだ生き方、やり方に不満を持っていても安心感があり、居心地が良いからです。だから、人間は中々今の生き方・やり方を変えようとしないのです。私は居心地が良いということは、成長が止まり、衰退の道を歩み始めている証左ではないかと考えています。
 この所謂失われた20年、構造改革を唱えない人はほとんどいなかったと思いますが、実際に実のある変革はほとんどなされておりません。
 変革しようとすると、既得権益者からは猛烈な抵抗に遭います。既得権益者は自分の利害に直接関わるので当然反対しますが、多くの直接利害に絡まない人も実際には、今の「何となく居心地の良い状態」から抜け出すのに強い抵抗があります。だから、多くの変革は実を結ばないのです。
 米国のトランプ現象を見ていて感じるのですが、社会が変わるのは、「外圧」と「極限にまで達した内圧」によるしかないのでしょうか。
 外圧とは、主には「環境の変化」と「ルールの変更」の二つだと思います。
 我々は様々な環境の変化に対しては、それに適応していかなくては生きていけないので、変わろうと努力します。そしてルールの変更については、主体的にルールを作る・変える側でない限り、その作られたルールに合わせて、自身を変えていかざるをえません。
 このように外圧には手を打っていきますが、「内圧」に対しては小手先の対応はしますが、抜本的な対策が打たれることは少ないのではないでしょうか。
 いくら優れた制度・仕組みでも未来永劫通用するものはありません。必ず時間の経過とともに制度疲労を起こします。それは科学技術の進歩とともに人間の考え方も変わるからです。ですから、現制度・仕組みに対する不満は蓄積されていきます。その不満が内圧です。
 内圧は放っておくと膨れ上がり、「どんでん返し」をするような破壊が起きてしまいます。破壊から立て直すには多大なパワーを必要としますから、破壊が起こる前に小さな変革を積み重ねていく賢い変革をしたいものです。個人も組織も手遅れの"ゆでガエル"になりたくなければ、現状に甘んじることなく、自らが「カエル=変える」しかないのではないでしょうか。
 今年こそは、ゆでガエルにならないよう内なる敵~居心地の良さと決別したいものです。