学校施設を中心とする公共施設の有効活用

印刷

最終更新日: 2017年8月14日

 学校や公民館等の公共施設は、高度経済成長期に整備されたものが多く、現在、老朽化への対応が問題となっています。また、人口減少・少子高齢化の進行等に伴い公共施設の利用者も減少がみられ、施設の必要性も含めて再配置・最適化が課題となっています。
 学校施設は、公共施設の約4割を占め、その有効活用は再配置・最適化の重要なポイントとなります。そのため、いくつかの自治体では、学校施設と地域の図書館や公民館、行政窓口等の複合化に取り組んでいます。

総量縮減方向にある公共施設

 国は、2013年6月「経済財政運営と改革の基本方針~脱デフレ・経済再生~」を閣議決定し、公的部門の改革に関しては、インフラの老朽化が急速に進展する中、「新しく造ること」から「賢く使うこと」への重点化が課題である、との認識を示しました。
 さらに同年11 月には、「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、14年4月、この基本計画に基づいて、各自治体に公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進するための「公共施設等総合管理計画」の策定を要請しています。
 こうした背景から、多くの自治体は、財政・人口見通し、需要変化などを勘案した結果、公共施設等の総量を縮減する方向性を示し、コストを抑制しつつ公共施設等の再配置・最適化に取り組んでいます。

学校施設見直しのポイント

 学校施設は、延床面積で公共施設の約4割を占め、最も広くなっています。また、学校施設は、第2次ベビーブーム世代の受け入れに対応すべく70年代から80年代前半にかけて整備されたものが多いため、現在、老朽化が深刻な問題となっています。改修の必要性に加え、児童・生徒の減少に伴う空き教室の増加や学校の統廃合の動きが、学校施設の見直しの優先順位を高めることにつながっています。
 この見直しは、学校施設単独で考えるのではなく、地域内の図書館や公民館等の公共施設を学校施設に複合化することで、公共施設等の総量を縮減すると同時に、「賢く使うこと」を実現させることがポイントとなります。

 公共施設の複合化による効果

 学校施設を中心とした公共施設の複合化による主な効果として、以下の点があげられます。 
 1つ目として、地域に施設を残し、存続させることができることです。地域住民が減少すると、その地域の公民館や図書館等は、別地区の施設との統合を検討されることが少なくありません。しかし、人口規模や施設の利用状況等を勘案し、複合化することで規模は縮小しながらも、地域に施設を残すことができます。
 2つ目は、地域住民の徒歩圏内に一つの場所で多くの機能を持った施設が誕生することです。学校施設は、ほとんどの児童・生徒が歩いて通う施設であり、地域住民も歩いて行ける一番身近な公共施設といえます。ここに、図書館や公民館、また、行政窓口等が集約されることで、利便性の向上につながります。
 3つ目は、財政面で、複合化による一体整備により、整備費用を削減できることです。学校施設や図書館等をそれぞれ単独で整備するよりも、建物を一つにすることで、延床面積が減少し、整備費用を圧縮することができます。併せて、今までそれぞれに発生していた管理費も削減できます。対象施設の延床面積が減少することで、水道光熱費や清掃、警備等の削減につながります。

複合化には課題も

 複合化による効果が見込まれる一方で、次のような課題もあります。 
 まず、地域住民や議会の理解を得ることがなかなか難しいことです。公共施設は、地域のシンボル的な存在であり、閉鎖については反対する声が多いのが現状です。複合化により施設は残るといっても、すぐ近くにあった施設が遠くに移ってしまうことについて、理解を得ることは難しく時間がかります。自治体は、地域住民としっかり向き合い、誠意をもって協議を行うことが重要です。
 次に、財政面で、国の補助事業により整備した施設を処分(転用、譲渡、除却)する際、補助金の納付(返還)を求められる場合があります。以前に比べると、処分制限は緩和されましたが、一部ではまだ制限が強く、財政力の弱い自治体にとっては、それが困難な状況にあります。
 さらに、複合化により利用されなくなる施設の解体費も大きな課題となります。解体費に対し、地方債を発行しようとしますが、後年に国の支援がない地方債であり、将来的に財政を圧迫することになってしまいます。しかし、解体しなければ、維持管理費を引き続き負担せざるを得ず、複合化の効果が大幅に薄れてしまいます。複合化は、利用されなくなる施設の解体までを含め、総合的に考えていく必要があります。
 このほか、児童・生徒の安全性を確保するためのセキュリティ対策も必要になります。複合化により児童・生徒や教職員等の学校関係者の他に、図書館や公民館などを利用する一般住民が同じ建物を利用することになります。また、各施設により利用する曜日や時間帯もそれぞれで異なることとなり、建物の管理方法が大変重要となってきます。

地域に適した公共施設の見直しに向けて

  現在、多くの自治体が、公共施設の再配置・最適化に取り組んでいます。その際、他の自治体が実施した活用方法は大きなヒントになりますが、自分たちの地域にもそのまま当てはまるケースは少ないものとみられます。それは、公共施設の配置状況や利用実態、人口の動向等、自治体が抱える課題がそれぞれに異なるためです。
 従って、自治体は、地域における公共施設の必要性とその役割、望ましいあり方について、ワークショップなどを通じて、地域住民と積極的に意見交換することがまず必要となります。そして、事業の目的や予算、住民の利用方法等についてコンセンサスを得ながら、公共施設等の再配置・最適化を進めていくことが必要です。地域住民の理解と協力は、公共施設の有効活用を検討するうえで最も重要なポイントとなります。
 学校施設を中心とする公共施設の有効活用については、廃校利用も併せて経済月報1月号で紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

2017年1月10

このページに関するお問い合わせ

公共ソリューショングループ

電話番号:026-224-0504

FAX番号:026-224-6233