物理変化と化学変化

 水は冷やすと氷になり、加熱すると水蒸気に変わります。
 この水の液体・固体・気体間の変化は、水の三態と言われています。変化はしていますが、これは所謂物理変化でして、水の分子式にはなんら変わりはありません。つまり本質に変わりがないということです。これに対して水素と酸素は、活性化エネルギーが必要ですが、それにより水素が燃焼すると水が作られます。これは水素と酸素から全く違った水という物質が作られる訳でして、化学変化と言われます。本質が変わったということです。
 最近中国が「中進国の罠」に陥っているのではないかとよく言われますが、中国は資本主義体制を採っている訳ですから、資本主義という物差しでみれば、後進国~中進国~先進国というステップの中で、先進国にステップアップするための壁に突き当たっているということではないでしょうか。投資主導の輸出型経済から内需型サービス経済に移行する生みの苦しみだと思います。
 しかし、これは先程の例で言えば、物理変化でして、本質が変わるものではありません。最近はあまり言われませんし、実際うまくいかなかった訳ですが、資本主義から共産主義へのアウフへーベンも所詮は物理変化だと思います。
 ですが、今先進国が突き当たっている「ポスト資本主義」という壁は、物理変化では乗り越えられない大きな壁ではないかと思っています。それは本質=価値基準を変える化学変化が求められているからではないでしょうか。
 しかし、先ほどの水の例で言うように、活性化エネルギーとか触媒がないと化学変化は起きない訳です。
 資本主義の求めるグローバリゼーションは、一方でエスニー化(アイデンティティを求める動き)を加速させ、それによる血で血を洗う民族主義・宗教戦争の様相を帯びてきているだけに、「ポスト資本主義社会」の新しい価値基準を創り上げていくことが今ほど求められている時はないのではないでしょうか。
 新しい年のスタートに当たって、足元の景気も気になりますが、少し長期的視点で物事を考え、新しい時代を切り開いていくには、そして化学変化を起こすには、どういう活性化エネルギーがそして触媒が必要なのか、真剣に考える年にしたいと思っています。