公衆無線LANを地域の活性化や防災に活用する動き
近年、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及により、公衆無線LANは新たな通信インフラとして全国的に整備が進められています。また、総務省でもICT活用による地域活性化を推進していますが、東日本大震災の教訓や国が進める訪日外国人受け入れ環境整備の動向なども踏まえ、耐災害性が高く地域活性化のツールとしても有効な公衆無線LANの役割に期待が寄せられています。
これまで主として民間事業者により、大都市を中心に公衆無線LAN環境が整備されてきましたが、近年、民間事業者による整備が困難な避難所等の地域防災拠点に無線LAN通信に対応するアクセスポイントを設置するなど、地方自治体が公衆無線LAN環境を整備し、防災や地域活性化に活用する動きが出てきました。
公衆無線LANの概要と近年整備が拡大した背景
公衆無線LANとは、主に宿泊施設や飲食店、空港・駅等の公共の場所において、無線でインターネットに接続できるサービスのことです。これまでの公衆無線LANサービスは、ノートPCを持ち歩いて仕事をするビジネス利用が中心でした。しかし、スマホやタブレット端末が急速に普及したことによって、公衆無線LANサービスが一般化しており、利用者数もさらに拡大することが見込まれています。
公衆無線LANは、有線網など既存の通信インフラを活用して簡易にインターネット環境を構築できるうえ、用いる周波数と無線技術が国際共通規格であるため、幅広い機器に対応できる特性があり、「誰でも・どこでも使える」インターネット環境の提供に有効です。
日本では、2002年に大手通信事業者が公衆無線LANサービスに参入したのを皮切りに、整備が進められてきました。このような民間事業者によるサービス提供は、契約に基づく有料のものですが、近年、地方自治体が災害時の通信手段とともに、訪日外国人に対して地域の観光情報を提供するなどの地域活性化目的で、無料公衆無線LAN環境を整備する動きが出てきています。
地方自治体による公衆無線LANサービス整備事例
例えば、京都市は、市街地を中心としたバス停、地下鉄駅、コンビニ店舗、公共施設等630か所に無線LANのアクセスポイントを設置し、無料サービス「京都どこでもインターネットKYOTO_Wi-Fi」を2012年から提供しています。公共施設では利用時間の制限がないなど、便利なインターネット環境です。
同様のサービスは福岡市、浦安市等でも提供されています。
さらに、総務省も平成25年度補正予算により、地方自治体が災害時における避難所での通信手段の確保のため、公衆無線LANなどの機能を有する防災情報ステーション整備する場合などに事業費の一部を補助する取組を行っており、全国で27団体(地方自治体や地域のケーブルテレビ会社)が事業主体となって公衆無線LAN環境の整備を行っています。
官民連携モデルによる公衆無線LANサービス展開が今後の普及に向けた課題
今後のわが国における公衆無線LANサービスの展開に当たって、特に地域活性化目的から地方自治体が整備の主体になる場合、訪日外国人観光客の利便性向上に向けて、観光案内所、文化財、自然公園、博物館等の拠点整備は官が担う一方、観光事業者等とも連携し、利用者ニーズに応じたサービスを提供する必要があると思われます。
このように考えると、公衆無線LAN環境は、官民連携が有効に機能する事業モデルであるといえ、交通拠点(駅・空港・バス停等)、ホテル、コンビニ、飲食店、自販機等収益が見込めるサービス提供の基盤として民間主導で進めることが可能な整備と連携しながら、防災拠点などインセンティブが働きにくい部分は官主導での整備により補完し、地域全体として一体的に整備を推進することが重要ではないでしょうか。
(2015.1.5)
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