平均寿命日本一の長野県を未来に引き継ぐために何が必要か
長野県が全国に誇る長寿の秘訣は何か?高い高齢者就業率、野菜が豊富な食生活など諸説あります。
今年2月末に厚生労働省から発表された2010年都道府県別生命表によると、長野県の平均寿命は男女とも全国1位となりました。また、7月末に同省から発表された2010年市区町村別生命表によると、男性の平均寿命が最も長かった市区町村は北安曇郡松川村の82.2歳でした。同村をはじめ、男性の上位20位以内に県内11市町村がランクインしています。さらに、上位50位以内に範囲を広げると、男性は松川村を含め19市町村、女性は88.0歳で19位となった佐久市をはじめ12市町村が入り、長野県の長寿が際立っています。
地域の保健福祉水準を総合的に示す指標として活用される平均寿命
厚生労働省は、その年の死亡状況が今後変化しないと仮定し、各年齢の人が平均してあと何年生きられるかの期待値を表す平均余命を、出生や死亡に関する統計データを基に算出しています。このうち0歳児の平均余命が日本人の平均寿命に相当します。都道府県別、市区町村別のデータは5年に1回算出され、それぞれの地域の保健福祉水準を総合的に示す指標として活用されています。
長野県は今回、男性の平均寿命が80.88歳で1990年以降5回連続の1位、女性が87.18歳で初めての1位となりました。これは、県民がこれまで長年にわたり健康づくりに正面から取り組むことにより築き上げてきた財産であると考えます。今後は、さらに健康を保ちながら長生きするための取組みが求められるでしょう。
ところで、都道府県別で順位がつく各種の指標は、数字に一喜一憂しがちです。しかし、平均寿命は多くの社会要因の作用によって形成されるので、データが示す現実を地域全体の課題として冷静に読み解き、どう克服していくかが問われることになります。その意味で、長寿の要因を分析する取組みが重要です。
長野県の長寿要因として指摘されるさまざまな事実と検証の取組み
平均寿命が全国上位にランクインする要因として、長野県が今年2月に公表した平成25年度から5か年の「信州保健医療総合計画~『健康長寿』世界一を目指して~」では、農家が多いことなどを背景にして高齢者の就業率が全国トップであり、生きがいを持って生活していること、男女とも野菜摂取量が全国1位であり郷土料理・伝統料理を有効に活用した食生活を送っていること、生活習慣病予防や孤独な生活の防止につなげる食生活改善推進員、保健補導員ら健康ボランティアによる自主的な健康づくりへの取組や活動が盛んなこと、医師、保健師、管理栄養士等の専門職種による地域保健医療活動が活発であることなどがあげられていますが、科学的な分析はなされていません。
そこで、県では、今年度、「健康で長生き」を推進するため、長寿を実現してきた長野県の地域特性や要因について科学的知見に基づく調査・分析を実施しています。来年度以降、市町村とも分析結果を共有する中で、「どの指標を伸ばせばさらに健康長寿につながるか」を見える化し、効果的に健康づくり施策を展開していく方針です。
長寿日本一を生かし伸ばすために重要な地域や住民のつながりによる力
長野県は1960年代に脳血管疾患による死亡率が全国でも高く、塩分の取りすぎが指摘されていました。そこで、「減塩県民運動」を徹底し、「味噌汁は1日1杯」「そばやうどんの汁は半分残す」など分かりやすい事例を挙げ、食生活の改善を促すとともに、県内各地のボランティアが病気予防活動などに草の根で取り組みました。
その結果、住民から住民に健康づくりが広がり、「長寿県・長野」の原動力になったといえる。今後、健康長寿という新たな目標に向かって、各地域で運動や食育などの取組みが充実することを期待したいと思います。
(2013.8.19)
関連リンク
公共ソリューショングループ
電話番号:026-224-0504
FAX番号:026-224-6233