動き出した公共データの民間による利活用
国や地方自治体が保有するデータは貴重な資産ですが、現在、必ずしも有効に活用されていません。そこで、近年、公共データを利用しやすい形式で公開し、民間企業やNPOなども含めて活用する取組みが広がってきています。
行政の透明性や信頼性の向上を図るだけでなく、公共データを活用した新事業や利便性の高いサービスの創出により、地域経済・地域社会の活性化が期待されています。
公共データの有効活用に向けたルールとして意義の大きい「電子行政オープンデータ戦略」
これまでも国が保有する統計や白書、各種審議会資料等の公共データは、ホームページなどを通じて公表されてきましたが、PDF形式やJPEG等の画像形式のためデータの機械判読ができず人手で再入力する必要があるなどの加工が困難なケースや、省庁ごとにフォーマットが異なり情報の収集や整理に多くの時間が必要とされるケースがあり、民間での利活用を結果として制限していることが課題として指摘されていました。
また、東日本大震災において、民間企業等が行政の保有する避難所情報、地図データを利用して震災関連情報を広く周知しようとしても、画像データのため二次利用が困難なケースもありました。
そこで、国のIT戦略本部(現在はIT総合戦略本部と改称されています)は、2012年7月4日、公共データの活用促進に集中的に取り組むための戦略として「電子行政オープンデータ戦略」を公表しました。この戦略では、二次利用が容易な形式でデータを公開すること、営利目的、非営利目的を問わず活用を促進すること、具体的な取組に着手し、成果を確実に蓄積していくことなど、公共データの公開・活用に向けた基本方針を定めています。
公共データを有効活用する社会に向け、政府全体として推進するメッセージとしての意義が大きいといえます。
地方自治体でも始まっている公共データ利活用への動き
メガネフレーム製造の分野で国内シェア90%を誇る福井県鯖江市は、オープンデータを市の重要施策と位置付けており、「データシティ鯖江」をめざし、人口、気温などの統計データや災害時の避難場所、市営駐車場などの施設データ、その他多くの公共データを民間企業によるソフトウェア開発が容易なファイル形式で公開しています。公開したデータは地元IT企業や市民に活用され、既に多くのアプリが誕生しています。また、鯖江市はオープンデータの取り組みに対する意識を高めるために、Webアプリコンテストを開催したり、他の自治体などと連携して公共データの公開・活用を推進する団体を設立したり、積極的に活動しています。
横浜市は、2012年12月、市、企業、大学、NPOなどが協働で、公共データ活用を推進する「横浜オープンデータソリューション発展委員会」を設立し、官民連携による予算書データの見える化に向けた取り組みなどユニークな活動を実施しています。
また、千葉市、奈良市、福岡市、武雄市の4市は今年4月、自治体や民間企業の持つ膨大なデータの活用を検討・推進する「ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会」を設置しました。この協議会は、企業、大学、行政が連携して、ビッグデータ・オープンデータの具体的活用策について検討を行うとともに、その活用を推進し、市民サービスの向上、市民主体のまちづくりの促進、経済の活性化に寄与することを目的としています。設立から間もないながら、既に、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長を構成員とする九都市首脳会議でビッグデータ・オープンデータのまちづくりへの活用を提案したほか、具体的な活用に向け、個人やグループ・企業等から活用アイデアを広く募集するため、アイデアコンテストを実施するなど精力的な活動を繰り広げています。
公共データの利活用による新たなサービスやビジネスの創出による地域活性化に期待
公共データを有効に活用することで、国民・住民への公共サービスの向上や効率化はもとより、透明性向上、企業活動の効率化、新たなサービスやビジネスの創出などによる活性化が期待されます。オープンデータのもたらす経済効果については、欧州委員会に提出された調査結果をGDP比から日本に置き換えた試算として、市場規模が約1.2兆円、経済波及効果が約5.4兆円との推計もあります。
オープンデータの推進のためには、国や地方自治体等が自ら積極的にデータを公開するとともに、企業や住民がこれを有効に活用し、新たな価値やサービスを創出する取組みが重要となります。また、民間が保有する公共性の高いデータを、ルールを決めて流通・活用促進することも必要と考えます。
(2013.6.4)
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