地域に広がるIC乗車券
10月27日(土)から、長野市内を走る路線バス(アルピコ交通、長電バス、ぐるりん号)に乗る際に、共通ICカードKURURUが利用できるようになりました。これにより、長野県内では初めてのIC乗車券(交通ICカードともいう)がスタートしました。
バスの乗車時と降車時に、車内の専用読み取り機にICカードを軽くタッチするだけで自動的に運賃が精算されるので、料金を確認したり、小銭を用意する必要もなく、とても便利な乗車券です。
ところで、日本にIC乗車券が初めて導入されたのは2001年11月。これはJR東日本のSuicaであり、2012年7月末現在の発行枚数は4,020万枚に上る国内最大のIC乗車券となっています。
都市部では、既に生活インフラとしての地位を築きつつありますが、地方都市でも活用が進められつつあります。IC乗車券は、単なる乗車運賃の決済手段や電子マネーとしてだけではなく、住民サービスへの活用や、観光、まちづくり等に活用し、地域活性化の起爆剤として期待する向きもあるため、その現状を紹介しながら、IC乗車券を活用した地域活性化の方向性について探ってみます。
大都市部で着々と進展するIC乗車券の社会インフラ化
首都圏など大都市部で普及しているIC乗車券は多機能化と共通化の動きの中にあります。
Suicaは、2001年11月の誕生以来、大きな容量と高い安全性という特徴を生かし、2004年の電子マネー機能による代金決済、2006年のモバイルSuicaの導入などを経て、多機能化が大きく進展しました。
他方共通化については、2007年の首都圏私鉄系IC乗車券PASMOとの相互利用に続き、2008年にはJR西日本のICOCAやJR東海のTOICAとの相互利用がスタートしました。そして、2011年5月に、全国10のIC乗車券が、2013年春から相互利用サービスを実施することが公表されました。このサービスが実現すれば、全国51の鉄道事業者及び98のバス事業者を小銭不要で利用できるほか、電子マネーとしても相互の加盟店舗で活用できます。今や日本人の財布・パスケースは、多くのカードであふれており、1枚のカードで広域かつ多様な用途に利用できることは非常に有益です。
地方で進みつつあるIC乗車券の地域カード・市民カードとしての普及
IC乗車券は大都市限定のように感じられますが、地方鉄道・バス事業者にも普及は確実に進んでいます。
カード名も、「ですか」(土佐電気鉄道)、「りゅーと」(新潟交通)など、親しみやすくユーモアのある名称が使われていることが多いといえます。特に地方圏では、IC乗車券を地域カードとして、地域活性化、住民の利便性向上、観光・まちづくり等に活かそうという試みがスタートしています。
人口約40万人の高松市にある高松琴平電気鉄道は2005年にIC乗車券「Iruca」を導入し、2011年8月時点で約21万枚を発行しています。電子マネー決済できる店舗・施設・自販機を駅内外に拡大するとともに、住民票の写しや納税証明書などの交付手数料を支払うこともできるほか、香川大学の職員証・学生証や高松市役所の職員証にも採用するなど、市民カードとしての地位を確立しつつあります。
ICカードによる地域活性化のカギは、サービスメニューの充実と共有・連携の視点
一方で、駒ケ根市全域の商店を網羅する加盟店で使える地域商店街ICカードとして「いつでも、どこでも、つれてって」をキャッチフレーズにスタートした「つれてってカード」は、隣接する飯島町や中川村にも利用地域を拡大し、行政との連携によって、地域内での公共カードとして展開されています。
ICカードによる地域活性化のためには、行政や他事業者との連携によりカード所有者が使える便利なサービスを充実させるとともに、1枚のカードを地域全体で共有・連携して育てていく視点が必要です。IC乗車券KURURUも、地域活性化の手段として育っていくことを期待します。
(2012.11.2)
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