ゆるキャラの活用による地域おこしを考える

 自治体が地域おこしや特産品PRなどのために作ったマスコットキャラクターが全国的なブームとなっています。最近も続々と生まれており、どこかほほえましい絵柄や着ぐるみが注目を集めています。ご当地キャラクターとも、また、どこかユーモラスなキャラクターに思わず顔が緩んでしまう人も多いことから「ゆるキャラ」ともいわれており、地域経済活性化に大いに貢献する成功例も出てきています。
 そこで、ゆるキャラブームの背景、地域の期待、成功例を通して、地域おこしへの活用のポイントについて考えます。

イベントの認知度向上や観光振興の手段として選定されるケースが多い

 ゆるキャラとは、「ゆるいマスコットキャラクター」の略で、イベント、各種キャンペーン、地域おこし、名産品の紹介などのような地域全体の情報PRに使用するマスコットキャラクターのことです。
 企業・団体のコーポレート・アイデンティティなどに使用するイメージキャラクターは専門のデザイナーやイラストレーターなどに制作を委託するケースがほとんどですが、ゆるキャラの場合、国体など地域主催のイベントの認知度向上や観光振興や献血など特定の行政目的の普及啓発の手段、また市が誕生して何十周年など節目の年の記念として、キャラクターそのものを一般公募し、その中から選定するケースも多くなっています。
 成功例として高い知名度を誇るのが、2006年に「国宝・彦根城築城400年祭」を記念して誕生した「ひこにゃん」です。彦根市によると、彦根藩二代藩主を寺の門前で手招きして雷雨から救ったとされる「招き猫」と、井伊家のシンボル「赤備えの兜」を合体させた白猫のデザインを公募により決定。400年祭では、期間中9ヵ月間のぬいぐるみなど関連商品の売上が推計17億円に達したとのことです。観光客からも「ひこにゃんがいるおかげで、何回も彦根城に行っています」との声が目立ち、今も地域経済に貢献しているといいます。

安価な宣伝費用ながら大きなPR効果への自治体の期待

 なぜ「ゆるキャラ」ブームなのでしょうか?「ひこにゃん」などの成功例にあやかり地域を活性化したいという各自治体の熱い思いがあることは間違いありません。これに加え、多くが公募により一般人がデザインしているため、制作費、広告費が安いことや、ネットの普及により口コミで急速に広がることによって、安価な宣伝費用で大きなPR効果を期待できます。また、個性あるキャラクターを作ればマスメディアも取り上げてくれます。
 さらに、自治体にとっては、行政のメッセージが伝わりにくい子どもや高齢者に対し、キャラクターを通じて簡潔に良いメッセージが伝わりやすいという意識もあります。

時間をかけて地域全体で活用することが成功のポイント

 ブームの影で、残念ながら年に数回稼動しただけで忘れ去られてしまうキャラクターもいます。
 成功のポイントは、小さく生んで、時間をかけて育てることと考えます。具体的には、国体などイベント用に制作された「ゆるキャラ」を頻繁に活用し、人気化させ、終了後その自治体のマスコットキャラクターに「昇格」させて、観光振興など自治体が普段取り組む多くの施策のPRに活用する方法です。
 例えば、埼玉県では、2004年の埼玉国体をPRするマスコットとして誕生したシラコバトをモチーフにした「コバトン」を、翌年から県のマスコットに昇格させ、着ぐるみ貸出やグッズ販売により知名度を高めてきました。全国から86体が集まり地域の特産品や観光地をPRする「ゆるキャラさみっと」も今年11月28日に羽生市で開催されるなど、県内市町村全体でご当地キャラクターを活用した観光振興、地域おこしに取り組んでいます。
 また、千葉県では、今年開催された「ゆめ半島千葉国体」と全国障害者スポーツ大会のマスコットキャラクターとしてデビューした「チーバくん」を来年1月から千葉県のマスコットに昇格させます。チーバくんは横から見た姿が千葉県の姿をしており、好奇心が旺盛で、未知のものに立ち向かうほど勇気と情熱がわき、体が赤く輝く千葉県に住む不思議な生き物という設定です。このキャラクターが、国体イベントなどで幅広い人気を集め、また関連グッズの販売も好調でした。千葉県によると、100以上の企業・団体が400種類以上のチーバくん関連商品を販売しており、これまでの売り上げは10億円といいます。さらに、地元金融機関が関連の定期預金を発売したり、ホテルが県産食材を中心に和食料理を提供するなど、人気はグッズにとどまりません。来年以降、県のキャラクターとしての活躍が期待されます。
 長野県でも、現在大型観光キャンペーンである信州デスティネーションキャンペーンのイメージキャラクターである「アルクマ」がさまざまなイベントで活躍しており、徐々に知名度も向上しています。携帯ストラップなどグッズの売れ行きも好調であるといいます。この人気を年内限りの信州DCのみで終わらせる手はないと考えていたところ、来年1月の信州DC終了後も、長野県観光をPRするキャラクターとして引き続き活躍することがこのほど決まったとのこと。大変喜ばしいことです。来年以降、埼玉県や千葉県のように、観光のみならず、長野県のあらゆる施策をPRするキャラクターを開発し、時間をかけて育てていったらどうでしょうか。

(2010.12.17)

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