自治体病院改革を考える
地域医療を支える自治体病院が経営改革を迫られています。
2007年度決算では、全国957病院のうち674病院(70.7%)は赤字となりました。不良債務額も過去最悪の1,186億円に上っており、自治体財政を圧迫しているケースもあります。
そこで総務省は2007年12月に自治体に対し、経営効率化や病院の統合・再編などの改革プランを作成し、3年以内に黒字化するよう求めるガイドラインを示しました。これを受けて、厳しい財政下でも地域医療を守るための病院経営を模索する動きが各地で始まっています。
減少する自治体病院
経営破綻する自治体病院が相次いでいます。北海道の夕張市立総合病院は夕張市の財政破綻とともに39億円に上る一時借入金を抱え、経営破綻しました。また、千葉県の銚子市立総合病院も、急激な医師の減少で収益が落ち、市から財政支援もできなくなったため、昨年9月末で診療を全面休止しました。病院の休止で、約160人の入院患者が転院を余儀なくされ、隣の市の病院まで毎回往復1時間半もかけて通院する住民も増えました。その後銚子市では、病院の診療休止を決めた市長に対するリコールの賛否を問う住民投票が行われた結果、市長解職への賛成票が上回り、リコールが成立。5月17日に市長選挙が行われます。
このように、経営破綻に追い込まれる自治体病院は全国で相次いでおり、2004年度末に1,000あった自治体病院は、統合や閉鎖などで、3年間で43病院減少し、957病院となりました。多くの自治体では、一般会計からの繰入れを行い、全国自治体病院の累積赤字合計額は2兆円を超えています。
財政悪化と医師不足が経営悪化の背景
三位一体改革など国から地方への補助金が減少しており、自治体の財政状況はかつてない厳しさで、自治体病院に対するさらなる財政支援は困難になってきています。しかし、より一層深刻な問題は医師不足です。
この医師不足は、臨床研修医制度の見直しにより大学から自治体病院に派遣される医師が1,500人も減少したことが原因といわれています。
しかし,
「自治体病院の職員定数は行政の定数条例によって定められており、診療の需要等に応じた柔軟な職員の増員・配置、随時採用には限界がある。」
「高度医療の専門医師などの人材確保のためには、専門資格に対する手当等、医師にとって魅力のある給与制度の検討が必要。」
「医療専門職の採用・異動といった人事権が病院長にないことから、診療需要等に応じた柔軟な職員の配置ができない。」
「事務職員の人事異動のサイクルが短く、例えば診療報酬請求等の受託業者をチェックする立場にある職員の専門性の維持・向上が難しい。」
などの関係者の話から、医師に厳しい勤務環境も大きく影響していると感じました。自治体病院が行政機構の一部門として位置づけられているため、人事や給与制度を病院独自に決められないなど、自由度がない経営形態が地域医療の危機を招いているともいえます。
地域医療を守るための自治体病院改革の方向性
自治体病院は、これまで、救急医療や難病など民間病院では採算の取れない分野や、災害時の支援など、地域医療を守る核としての役割を果たしてきました。このため、自治体病院と民間病院の役割分担について改めて見直しを行い、自治体病院が提供しなければならない部分については、持続可能な経営が成り立つよう、全体として効率的な体制に改革していく必要があります。
見直しの視点として3つあります。
(1)最小の経費で最大の効果を上げるような運営ができるよう、経営効率化。
(2)市町村よりも広い地域を単位に、病院のネットワーク化を進め、地域の基幹病院とそれ以外の日常的な医療を担うような病院への再編成。
(3)地方独立行政法人、指定管理者など民間経営手法も取り入れて経営形態を見直す。
この際、診療の受け手である住民と自治体との対話により信頼関係を築くことや「コンビニ診療」を減らすなど住民の意識改革も重要な課題であるといえます。
(2009.4.21)
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