注目を集める中高一貫教育
首都圏では約20%の小学6年生が中学受験
最近急速に社会的関心が高まっているのが、中学と高校の6年間を一貫したカリキュラムで教育を実施する「中高一貫教育」です。
私学先行で始まった中高一貫教育ですが、公立の中高一貫校が増えたことも一因となり、大手進学塾の調査によると、首都圏では、2008年、少子化の影響で卒業予定の児童数が前年比約1万人減少したにもかかわらず、逆に受験者数は約3千人増加し過去最多となったとのことです。約20%、5人に1人程度の小学6年生が中学入試にチャレンジしている計算になります。
全国的に増加する中高一貫教育校
保護者ニーズの多様化と、私立中高一貫校が公立校を追い抜き、着々と進学実績を上げていく実情を背景に、文部科学省は今から10年前の1999年4月に公立の中高一貫校を制度化しました。文部科学省資料によれば、中高一貫教育校は2008年度334校となり、前年度比約2割、54校も増えており、2004年度の153校から5年で倍増しました。
中高一貫校の増加には、現行のゆとり教育により学習内容が親世代の頃よりも薄くなったことに保護者が戸惑っていることも背景の一つにあります。そのため、一般の公立中学校よりも授業数や学習内容に柔軟に対応できる一貫校で確かな学力を身につけさせたいと願う親が増えています。
中高一貫教育は、高校入試もなく6年間、計画的、継続的に教育することから、教員は多感な生徒とじっくり向き合うことができます。また、生徒は関心分野を深められ、ゆとりを持って深堀学習などにも取り組め、優れた個性や創造性を発見し伸ばせるというメリットがあります。
しかし、中高一貫教育にはこれまで記載したようなメリットがある一方、進路の選択を小学校段階まで引き下げ、受験競争を助長すると指摘する声もあります。
望まれる地域ニーズを取り入れた中高一貫教育
このような全国的な流れと同様中高一貫教育について私立が先行する長野県内でも、公立高校のあり方見直しの中で、中高一貫校化の検討を進めている地域もあるようです。公立中高一貫校は、全国のほとんどの都道府県で既に設置済ですので、長野県はこれまでの全国の動向を踏まえ、地域ニーズや県内の産業集積に即した中高一貫教育が求められます。
例えば、ものづくりや農業生産に従事する人の割合が高いという特徴もありますので、工業・農業教育も取り入れた中高一貫教育という方向性もあります。実際秋田県では、横手工業高校を設立母体とした中高一貫校の県立横手清陵学院が地元企業への就職者を送り出すとともに国公立大学への進学者も多数輩出するという特色ある教育実践を行っています。
首都圏の公立一貫校では10倍を超える競争率による入試が実施される学校もあります。しかし、公立中高一貫校のすべてが順調なわけではありません。香川県の県立中高一貫校では2年連続定員割れにより授業や行事運営に支障が出ることから2009年度から中学入学者の募集を停止し閉校が決まっています。
生徒が集まる、進学実績が上がるという中高一貫に対するイメージが先行しているともいえます。重要なのはどんな人材を育てるのかという教育の中身です。
長野県でも、各地の先進事例を手本に、地域ニーズに即し、地域産業をさらに活性化できる教育実現のために、教育関係者や保護者、産業界が知恵を出し合い、明日の長野県産業を担う人材を育成していきたいものです。
(2009.2.3)
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