金融市場:日本の金融システムは1.25%の利上げまで耐えられる?

既存シナリオは“オフトラック”、それでも利上げに向けて柔軟な姿勢を維持

 日銀は5月の金融政策決定会合において政策金利を0.5%に据え置いたが、同時に公表された展望レポートでは、実質GDPおよび物価見通しが大幅に下方修正された。背景には、トランプ政権による関税政策の不透明性があり、従来の「賃金と物価の好循環」シナリオは一旦軌道を外れたと評価される。特に、2025年度の成長率見通しは潜在成長率並みに引き下げられ、物価見通しも2026年度にかけて2%を下回る水準に修正された。これにより、日銀は利上げの一時停止を宣言した形だが、その後公表された主な意見などをみる限り、政策スタンスとしては外部環境次第で利上げの可能性を排除しない姿勢が窺われ、今後の政策方針について予断を持たず柔軟性を維持した格好である。

日本の金融システムは1.25%の利上げに耐えられるとの試算

 この間、4月に公表された金融システムレポートでは、マクロ・ストレステストの結果を通じて、仮に短期金利が1.25%程度まで上昇しても、国内金融機関の大半は自己資本比率を規制水準以上に維持できるとの分析が示された。ただし、海外金利の高止まりや金融市場の急激な調整といったリスクシナリオでは、金融機関の健全性に対する影響が相対的に大きくなる可能性が指摘されている。加えて、米国の関税政策がグローバルな供給網に与える影響や、インフレ再燃への懸念が強まる中で、FRBの政策スタンスも不確実性を高めており、日銀の金融政策運営は引き続き極めて流動的な状況にある(詳細はレポートをご覧ください)。

金融市場:日本の金融システムは1.25%の利上げまで耐えられる?(724KB)(PDF文書)

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