長野県経済情勢報告~2023年10月調査より<2023・11・10>
コロナ収束、猛暑特需も業況感は2期連続の悪化
今年の夏は例年にない猛暑で、残暑も厳しく長く続いたが、10月に入ると一転冬のような日も増えた。どうも日本列島は、夏夏冬冬というような夏と冬しかない四季になってしまったように思う。
当研究所の23年7-9月期の四半期業況アンケート調査や産業別四半期見通し調査を見ると、今年の猛暑のプラスの影響は、主に大型小売業や飲料製造業に現われており、夏物の洋服や清涼飲料が良く売れたようだ。
ただ、この猛暑により地元のリンゴなどの収穫量は減ってしまい、飲料製造業には原料の減少と値上げというマイナス影響を及ぼした面もある。
もっとも、大型小売業などの売り上げ増加は、5月の新型コロナの感染症法上の分類が5類に変更になったことによる人々の消費マインドの改善が根底にはあるようだ。さらに、物価が上がる中、店頭に並ぶ商品の価格も上がっており、その分、売り上げが増えたという一面もある。
また、ここにきて不足していた自動車用半導体もようやく正常化しつつあり、自動車生産が回復していることから、自動車部品製造業や自動車販売業なども好調になってきている。
一方で、長野県製造業で大きな比重を占める生産用機械や電子部品・デバイス製造業が、海外経済の減速やPC・スマートフォンなどIT 関連需要の減少から低迷を余儀なくされており、そこに付随しての機械器具卸や貨物業なども振るわなかった。
また、夏季行楽シーズンであったことや円安によるインバウンド客の増加など好条件も揃い、宿泊・旅客など観光関連サービス業では客数が増加したが、人手不足から稼働率を上げられないという構造的な課題も表面化した。
このような点を振り返りながら、調査全体をみると、猛暑特需やコロナ感染症法上の分類5類変更による消費押し上げ効果、自動車の好調さのようなプラスの要因はあったが、やはり海外経済減速のマイナス影響は大きく、業況感は前期に続いての2期連続の悪化となってしまった。
年末にかけても、厳しい状況は継続
では、23 年 10~12 月期はどのようになっていくのだろうか。
長野県では、生産用機械や電子部品・デバイス製造業の比重が大きいため、IT関連需要の回復や海外経済の回復が見込まれると全体の回復が期待できる。
しかし、10月10日に公表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しをみると、2023年の3.0%から24年は2.9%と成長率は低下方向を辿る見通しだ。ユーロ圏では23年既に0.7%と厳しく、米国は2023年2.1%、24年1.5%、中国は23年5.0%、24年4.2%とそれぞれ減速の見通しとなっている。
一方の非製造業でも、秋の行楽シーズンを迎え国内外の観光客増加が見込めるが、人手不足解消の目途は立たない。このように短期的には厳しい見通しとならざるを得ない。
IT関連需要の低迷は循環的な事象であるため、年を越せば明るい兆しも見えてくる。一方の人手不足は日本全体の労働力人口が減っていくという構造的な問題であるため、解決は難しい。
ロボットやデジタル技術活用の必要性は言うまでもないが、先ずは一社一社が社員が働きやすい環境を整備し、それを土台に社員の働きがいを高め、生産性を上げていくということから始めなくてはならないだろう。
(資料)SBCラジオ Jのコラム 2023.11.10放送
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