小さくても下請けではなくメーカーとして生きる<2021・09・27>
自動車のアフターマーケットでブレーキパッドを売る
毎月放送しているSBC「明日を造れ・ものづくりナガノ」。2021年9月は、佐久市のエムケーカシヤマ株式会社の樫山剛士社長に出演いただいた。
同社は自動車のブレーキパッド・シューを自社ブランドで製造・販売する独立メーカーである。
ブレーキパッドというのは自動車を止めるブレーキの心臓部だ。自動車はブレーキをかけると、タイヤの内側にあるブレーキローターをブレーキパッドが両側から強く挟み、パッドの摩擦によりタイヤの回転を停止させるしくみとなっている。
ディスクブレーキ向けがブレーキパッド、ドラムブレーキ向けがブレーキシューという。
創業の精神「メーカーとして生きる」を貫く
自動車部品を作っている企業の多くは、自動車メーカーから受注を受けて製造し、納品するという形態をとる。そのためエムケーカシヤマのように、自社ブランドで自動車部品を販売しているという中小企業は珍しい。
そうした形態をとれる理由は、同社がアフターマーケットという中古車などが流通する市場を対象にしていることにある。
同社創業者の創業の精神は「小さくても下請けではなくメーカーとして生きる」というものだ。
社名のMK KASHIYAMAの MKは創業者樫山信氏のイニシャルからなっている。
現社長で3代目となるが、頑なにこの精神を守ってきた。
メーカーとして生きるためには開発力と販売力が必須だが、同社では多様な自動車に合ったブレーキパッドを自ら開発し、自ら販路を開拓してきた。
ブレーキパッド・シューは車種により大きさや性能が全て異なるが、同社では国内メーカーで販売している車種全てに対応できる製品を揃えている。品揃えでは国内1位だ。
日本車が走っていれば、どの地域、どの国も市場となるため、「エムケーカシヤマブランド」で自ら約80ヵ国での市場を開拓し、販売を行っている。
カシヤマブランドを支える強み
これほど多くの製品に対応できるのは、同社が加工機械を自前ですべて製造できるからだ。同社では、製造機械の8割を自社で製造している。
もともとブレーキパッド、ブレーキシューという特殊製品の加工機を製造している工作機械メーカーは少なく、自社で造らざるを得なかったというのが始まりだ。
現在では工場内に自社製造装置を40台程設置しており、超多品種の生産を可能にしている。
「自分達で機械を造れるからこそ、小ロットで大量な生産ができる。いろいろなアイテムが造れることが当社の強み」と樫山社長は教えてくれた。
そして、もう一つの強みがブレーキパッドの摩擦材を作り上げる技術だ。
摩擦材は様々な材料を配合するが、このノウハウは一朝一夕に蓄積できるものではない。
ブレーキパッドは自動車の車種は勿論、国ごとに異なる。それに適合するよう摩擦材を絶妙な調合で作り上げている。
強みを生かした事業転換
こうした強みは、他の産業への事業転換の基盤となる。
特に研磨剤は、自動車以外の産業での用途も広い。
樫山社長は、この用途展開にエムケーカシヤマの将来像を重ねている。
「小さくても下請けではなくメーカーとして生きる」という創業の精神は、事業展開の指針として同社の生き残りを支えていくように思う。
(参考)SBC信越放送「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2021年9月18日放送)
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