優しい人が集う町、下伊那郡高森町の地方創生<2020・09・11>
高森町 に行ってきました
中央アルプスと南アルプスに囲まれた高森町は、豊富な果樹に恵まれ、市田柿発祥の地としても有名だ。
「町民アンケート」では、約9割が「高森町に住み続けたい」との回答を寄せるなど、住民の暮らしの満足度も高い。
全ての基盤を「人」と唱える壬生照玄町長に、地域づくりついて話を伺った。
地域づくりは「人づくり」
壬生町長の実家は天台宗のお寺であり、そのせいか大切にしている考えは「忘己利他(もうこりた)」。
これは己を忘れ他を利するのが慈悲の極みであるという最澄の教えであり、役場職員にも「住民に尽くせるような人材に」と日々語っている。
併せて地域住民にも望む姿があるという。
それは、「家族や友人など先ずは身近にいる人を大事にする」という人としての基本だ。これなくして、地域活動などできは筈がない。
地域活動が集ったものが地域づくりとなる。そうであるなら、身近な人を慈しめる人たちを多く輩出できる町が「地方創生」で勝ち残れる。地方創生にかける壬生町長の思いだ。
確かに高森町に住み続けたいという住民が9割という背景には、高森の人たちの優しさがあるのだろうし、そうした町に人が募るのは当然だろう。
コロナ禍で発揮された職員の力
町の職員は、一体誰目線で仕事をすべきか、それは町民であることは言うまでもない。
今回のコロナ禍で給付された国の特別定額給付金を長野県で一番早く申請書を住民に送ったのは高森町だという。そして、5月15日にはほとんど振込みが終わったそうだ。
何故なら早く給付することは住民利益に叶うことだ。しかし、事の本質はこのことではない。職員にとって給付は単なる事務処理で、本当の仕事は空いた時間を作り、困っている町民を支援することだった。
地元の飲食業などの売り上げ実態などを調査して、即座に必要な施策と予算を自分たちで考えていったのだという。
このような自主的な行動は、早稲田大学マニュフェスト研究所の北川正恭教授の指導によるところも大きい。前町長時代から北川教授に依頼し、職員教育を続けてきた。
「役場というものは住民の皆さんに『してあげている』という視点ではいけない」、北川教授が強調されるところだ。
義務教育の間に人間としての総合力を学ぶ
優しさがあり、自ら動ける住民が地域を元気にする。そのためには、人間としての総合力を義務教育期間に身につけなくてはいけないと壬生町長は考える。
実施しているのが、中学生による起業への挑戦だ。例えば、町に増えてしまった竹やぶの活用方法を中学校で研究してもらい、そこから出たアイデアを実際に町が事業化して収入が得られるか試しているという。
さらに、中学生を対象とした企業説明会を開催し、中学生に地場産業知ってもらい、職場体験へとつなげている。
こうして、地元の産業や企業を知ることで、自分たちがどのような仕組みの中で生きているのかが分かる。
学校と家の往復だけでは、地域への愛着はなかなか湧かないだろうし、地域にある仕事など知る由もない。
「次世代に地域のため郷土のために頑張っていこうという気持ちを持ってもらい、地域に戻ってきてもらう。そういう人をきちんと育てないと地方創生にはならない」。
人口減少に対峙した地方創生だが、人口増のために出来たことは自治体同士の人の奪い合いだった。
そうではなくて、それぞれの故郷に帰ってくるような子供の育成や、戻ってきたくなる地域づくりこそがあるべき姿だろう。
人こそという話を聞きながら、本来の地方創生をイメージできた気がした。
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