制約があるからこそ強くなれる~地方中小企業の力~<2017・04・04>
経営者から教えていただいた壁を乗り越える知恵
新年度を迎え、街には新しいスーツに身を包んだフレッシュマンを多く見かけます。新人の皆さんは期待と不安の中、新たなスタートを切られたものと思われます。これからの長い職業人生、いくつもの壁が立ちはだかりますが、それゆえの人生です。
今回は中小企業の経営者から教えていただいた「壁を乗り越える知恵」について、新人の皆さんと考えてみたいと思います。
「明日を造れ!ものづくりナガノ」100回記念番組にて
SBC信越放送のテレビ番組「明日を造れ!ものづくりナガノ」に2008年10月から出演し、今まで多くの経営者にお会いしてきました。今年の1月には100回を迎えたことから「人材育成」をテーマに記念番組を放送しました。
番組には、過去に出演された、千曲市のフレックスジャパン株式会社矢島隆生社長、塩尻市の株式会社サイベックコーポレーション平林巧造社長、飯田市の多摩川精機株式会社萩本範文副会長ら3人の経営者に登場いただき、それぞれの会社の人材育成について語っていただきました。
ダイバーシティ・尖った人材・不易流行の人材育成
フレックスジャパンは、年間1,100万枚を生産する大手シャツメーカーです。アジア諸国にある拠点で全体の97%を生産しています。これらの拠点でもMade in Japanブランドでのシャツを売っていくためには、基盤となる国内工場での人材をレベルアップしていく必要があります。そのため、高度技能を身に着けた女性社員に長く活躍してもらえるよう、女性が働きやすい社内制度の充実に取り組んでいます。現在では国籍や性別・年齢に関係なく活躍できるダイバーシティな環境が定着しています。
サイベックコーポレーションは、精密プレス加工で自動車分野に進出し、さらなる精度向上を図るための工場「夢工房」を地下に新設しました。加工中に振動がほとんど起こらずに、温度も一定のため、さらなる高精度加工が可能となっています。当社の理念は「社員は家族」で、それが人材育成の根底にあります。家庭の安心と会社の安心がなければいい仕事はできないという考えです。大手と戦えるように、平均化した人材ではなく、安心の土壌で「尖った人材」を育てています。
多摩川精機は、センサ技術に強みを持ち、ハイブリッド車のシングルシンという角度センサでは、世界シェアの8割を持ちます。この強みを生かし民間航空機分野へも挑戦しており、地域では航空宇宙クラスターを組織しています。新分野への進出を可能にするのが、熟練技能者からハイテク技術者までの厚い人材です。当社の昔ながらの技術が、最新鋭の航空機も使われています。変えてはいけない技術を守りつつ、最先端技術に挑戦する不易流行というべき人材育成を綿々と続けています。
地方の中小企業だからこそ強くなれる
これら3社に共通するポイントは、制約(壁)があるからダメということではない、ということが分かります。また、地方の中小企業だからダメということでもなく、地方にある中小企業だからこそ強いという点も多いようです。
フレックスジャパンは、国内の人件費は高いが、だからダメではなく、だからこそMade in Japanを作り上げ高付加価値で売ることに成功しています。サイベックコーポレーションは、中小企業だからこそ尖った人材育成が可能で、大手にはない発想で技術を開発しています。そして多摩川精機は、地方企業だからダメではなく、地方でやっていくと決めたからこそ、単なる下請け型ではなく研究開発型企業になったのだと言います。
このように知恵は制約(壁)があることによって生まれることが多いものです。1970年代に米国での厳しい環境規制(マスキー法)が新たなエンジン開発を誘い、日本メーカーの性能を上げたことは有名な話です。であるなら地方でヒト・モノ・カネがない制約だらけの中小企業は、知恵の源泉と考えてもいいのではないでしょうか。
新入社員の皆さんも自分は一流大学でないからダメだとか、自分は何々が無いからダメとかではなく、二流で不足しているからこそ、トップ人材やベテラン人材にはできないような仕事が必ずできると信じて、壁を乗り越えて行って欲しいと思います。
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