2026年度の県内企業の賃上げ動向<2026.3.11>

印刷

最終更新日: 2026年3月11日

 

価格転嫁の遅れが企業収益を圧迫

 県内企業の収益環境は、厳しい状況が続いています。背景の一つに原材料費や電力・ガス料金、人件費などの上昇が続く中で、収益を左右する価格転嫁が十分に追いついていない点があります。長野経済研究所が2025年12月中旬から2026年1月中旬にかけて県内企業約600社を対象に実施したアンケート調査によると、コスト上昇分を「すべて転嫁できた」企業は約2%にとどまりました。一方で、価格転嫁割合が半分以下の企業は2割を超えており、コストの増加が企業収益を圧迫しています。

厳しい環境下でも広がる賃上げ

 こうした厳しい局面にあっても、県内企業の賃上げ姿勢は広がっています。本調査で、2026年度の賃上げ見通しを尋ねたところ、「実施予定」が63.9%、「検討中」が23.8%と、合わせて約9割が実施に向けて動いています。過去3年の同時期調査と比べても最も高い水準で、賃上げへの強い意欲がうかがえます。
 この背景には、慢性的な人手不足があります。「賃上げをしなければ従業員を確保できない」「新しい人材を獲得できない」など、賃上げは単なるコスト増ではなく、人材確保・定着に向けた不可欠な投資として位置づけられつつあります。

持続的な賃上げの鍵は生産性向上

 賃上げによって家計の所得環境が改善すれば、消費が下支えされ、地域経済の回復が後押しされます。しかし、企業収益の改善が伴わなければ持続的な賃上げは難しくなります。そのためには、適正な価格転嫁の実現に加え、デジタル化や省力化投資による生産性向上への取り組みが不可欠です。
 一方で、こうした前向きな賃上げ姿勢に対し、外部環境の変化による不透明感が再び重荷となっています。米国では、関税政策を巡る司法判断を受け、トランプ政権が新たな枠組みで関税を組み直すなど、経済ルールが頻繁に変更されています。また、中国では日本企業への輸出規制が導入され、サプライチェーンの分断リスクが意識されています。こうした規制や政策が短期間で変動する状況下では、企業は採算や将来のコスト負担を予測しにくく、受発注の縮小や設備投資の先送りといった慎重な判断を迫られます。
 2026年度は、厳しい国際情勢のもとでも、賃上げと生産性向上を両輪とした消費拡大という好循環へつなげられるかが焦点となります。

 

(初出:2026年3月6日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233