安心な水を届け続けたい、能登半島地震でも活躍した非常用浄水装置

印刷

最終更新日: 2025年5月12日

 (株)シバウラ防災製作所は、2017年に(株)IHIシバウラ(現IHIアグリテック、松本市)から分離独立した消防・防災機器メーカーで、21年に日本フェンオール(株)(東京都)のグループ会社となりました。可搬式消防ポンプは国内シェア約50%を誇り、非常用浄水装置など防災・減災に欠かせない機器等を製造・開発しています。

盲点だった生活用水の不足も解消

 イチ押しは、大容量の浄水を可能とする非常用浄水装置です。同社の製品は、最大で毎時2,000Lもの水を浄化することができます。災害時、成人1人当たりに必要な飲料水は1日に3Lだが、トイレや手洗いなどの生活用水はその10 倍の30Lが必要とされます。日頃から飲料水を備蓄している事例は多いですが、生活用水まで備えているところは少なく、大規模災害時、トイレや手洗い、靴の洗浄等の生活用水の不足は、感染症対策などの衛生管理面で課題になってきました。同社の製品と各地にある消防ポンプを組み合わせれば、水道2本分の水量を一気に確保できることになり、取水する水によっては飲用も可能です。ただでさえ不安なことが多い災害時に、最も重要なライフラインである水が確保できるため、被災者の不安は大幅に軽減されます。
 コスト面でも、避難所で大量の保存水を購入・備蓄する場合と比較して、非常に経済的です。また、備蓄スペースも大幅に削減できるため、倉庫代の節約も期待できます。

    

 (左)数々の災害とともに進化してきた同社の非常用浄水装置
 (右)可搬式消防ポンプは各地の消防署等に普及。非常用浄水装置と組み合わせれば河川からの取水も可能

高性能フィルターと独自の洗浄システム

 本装置は、活性炭と中空糸膜の2種類のフィルターを格納しており、浄水能力も業界屈指です。特に、中空糸膜は、大腸菌などの細菌よりも細かいろ過精度を有しており、除菌性能は高いです。さらに、特許を持つ逆流式フィルター洗浄システムによりメンテナンスも容易で、フィルターの交換時期も5年と競合他社製品を上回ります。   

30年の実績と現場の知見を生かして進化

 安全性と耐久性が求められる消防分野で磨き上げられた高い技術で作る「シバウラ」の非常用浄水装置は、阪神淡路大震災の翌年から生産を続けてきました。累計出荷数の約2,000台は、官公庁等をはじめ、世界的な大企業や都内の有名商業ビル等で採用されています。

 24年の能登半島地震では、奥能登地域を中心に長期間断水が発生したが、この浄水装置は3カ月以上も稼働し続け、被災者のみならず、救助活動を支える多くの人々の生活を守りました。「今回も現場の方から教えてもらうことがたくさんあった」と語るエンジニアの竹川浩雄氏は、能登半島地震後に新たな付属品を開発するなど、現場の気付きを製品開発に生かしています。

「水関連の製品が売り上げの6割以上を占めるため、『みずをミカタに!防災のシバウラ』をスローガンに、人々が安心して生活できる環境整備に貢献したい」と上條社長は語ってくれました。

  

(図)24年の能登半島地震では、同社の非常用浄水装置が活躍。全国の消防署や消防団との強いつながりを支える充実した特約店網によりアフターサービスも安心

株式会社シバウラ防災製作所

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233