安曇野ブランドを作り、発信する(株)VAIO<2024・06・29>
安曇野のパソコンメーカー
VAIO(株)は、安曇野市に本社・生産拠点を置く、パーソナルコンピュータ(PC)の専業メーカーだ。
ソニーの犬型ロボットAIBOの製造を担ったこともあり、厚い技術者層と高度な設備が蓄積されている。
現在、純粋な国産PCは同社の他、数社となっており、made in JapanのPCを担う貴重な存在ともいう事ができる。
2014年に設立、コロナ禍で急成長
「VAIO」は、ソニー(株)のPCのブランドとして1997年に誕生した。
2014年にPC部門がソニーから独立してVAIO(株)となり、安曇野の本社工場を拠点に新たな製品の開発・製造・販売をしている。
現在の主なユーザーは法人だが、コロナ禍のリモートワークなどの拡大により、その間に売り上げは倍増している。
ビジネスシーンに合わせユーザーの生産性が高まるような仕様や、高い耐久性を持った作り込みが功を奏したものと思われる。
VAIOのものづくり
「VAIO」に対する高性能、高品質というユーザー評価は定着したものとなっているが、これを支える同社のものづくりは、以下の3つが特徴となっている。
1つ目は、「上流設計」という体制だ。
商品企画の初期段階から、設計、製造、品質保証、アフターサービス等全ての部門が一同に会し、商品開発の複数のプロセスを同時並行で進めることで、開発期間の短縮化や量産に入ってからの仕様変更などを防ぐ効率的なものづくり体制である。
2つ目は、徹底した品質試験だ。どのような使用環境でも不具合が出ないよう50項目に及ぶ試験を実施している。
例えば、「落下試験」、127cmの高さから実際にパソコンを落下させ、不具合の発生を確認する。他にも、大量の埃をパソコンに吸わせて作動を確認する「埃試験」や、PCの角に衝撃を与え耐久性を試す「角衝撃試験」などユニークな試験が繰り返される。
「安曇野FINISH」というブランド
3つ目は、出来上がったPCの品質を撤退保証する「安曇野FINISH」である。
機械と専任の検査員により二重の検査を行い、品質に間違いはないという同社のユーザーへの約束として「安曇野FINISH」というスタンプを押し、出荷している。
ブランドは「刻印」という意味が発祥だが、まさに「安曇野FINISH」というスタンプがブランドを作り上げ、磨き上げているのだろう。
地域を大切に、地域とともに
「安曇野FINISH」からも明らかなように、同社では安曇野という地域をとても大切にしている。
それは環境保全活動にも現れている。
その一つ。同社は、クララという植物を敷地内に植え、手入れをしている。クララはマメ科の多年生草本植物で、初夏から夏に咲く。
このクララを餌とするのが、絶滅危惧種に指定されている「オオルリシジミ」という瑠璃色の翅を持つ大型の蝶だ。安曇野市の天然記念物の蝶ともなっている。「オオルリシジミ」の保護活動の一環として有志が集まり、餌となるクララを3年前から育てているのである。
非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながることを「バタフライ効果」と呼ぶが、まさに「オオルリシジミ」の羽ばたきの一つが地域の環境をがらりと変えていくかもしれない。
VAIOは今年で独立10周年を迎えるが、安曇野ブランドのさらなる展開が楽しみである。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2024年6月29日)
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