長野県経済情勢報告~2024年1月調査より<2024・01・29>

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最終更新日: 2024年1月29日

新型コロナの影響から脱し業況感は3期振りの改善だが、先行きは慎重姿勢

 今回は長野経済研究所の四半期業況調査より、2023年10月~12月期の経済の現状と、2024年1月~3月の見通しについて報告したい。

 まず、2023年10月~12月期の業況感だが、今期は3期ぶりの改善となった。

 昨年5月に新型コロナが5類に移行して以降、個人消費は持ち直してきており、加えて円安環境からインバウンドが増加するなど回復の向きがここに来て重なってきた。また、自動車向け半導体不足が解消したことによる生産拡大のプラスの影響も大きい。

 ただ水準はいまだに低い。業況判断DIは今回4.9ポイント改善しているのだが、マイナス5.8にとどまっている。水準が低い主な要因は、製造業が冴えないことにある。海外経済の低迷や半導体の在庫調整が進まないことからIT関連需要の持ち直しに時間がかかっている。

 2024年1月~3月の見通しについては、再び悪化の見通しだ。理由は上記の製造業の要因に加え、人手不足の影響などを懸念しての慎重姿勢が増えている。業況判断DIは、今期より11.4ポイント悪化し、マイナス17.2となる見通しだ。

 では具体的にどの産業が回復して、どの産業が下押ししているのか見てみたい。

自動車部品・食料品製造の持ち直しから製造業は2期連続改善

 まずは製造業だが2期連続の改善となった。業況判断DIは5.5ポイント回復したが、まだマイナス10.3という低水準だ。

 改善の要因は、自動車の生産拡大に伴う自動車部品の受注増や、新型コロナの影響から低迷を続けていた食料品製造や飲料製造が堅調さを戻してきていることだ。一方、下押し要因は、在庫調整が続く半導体などIT関連需要の低迷から生産用機械や電子部品・デバイスが低調であることだ。

 つまり、車載用半導体不足の緩和や新型コロナの影響を脱し改善する業種もある一方で、海外経済やIT関連需要低迷からマイナス水準を抜けきれない状況だ。

観光客増加・個人消費回復で非製造業は3期振りに改善

 次に非製造業だが3期振りの改善に転じた。業況判断DIは、4.5ポイント回復しマイナス1.8となった。製造業よりも水準は高い。

 改善に転じた主な要因は、新型コロナのマイナス影響を脱した観光関連サービス業や大型小売業で客数が増加したことだ。さらに大型小売業では価格転嫁も進んだ結果、売り上げを伸ばした。また、自動車の生産が回復したことから、自動車販売でも新車への買い替えが順調だった。

 一方、機械器具卸と貨物は、製造業の回復の遅れを受け受注は低調にとどまった。

今後も人手不足、コストの高止まりから慎重姿勢

 先行きに対しては冒頭述べたとおり悪化見通しであり、特に貨物については難しい。働き方改革に伴う労働時間規制が4月から実施される。それに伴い人件費の増加分を補う荷主との交渉が必要となるほか、ガソリンなどのコスト増加が先行きに対する見方を厳しくしている。

 業種全般でも、コスト増加分の価格転嫁の行方や人手不足を巡っての動向は不透明であり、しばらくはこれらの課題と付き合っていかなくてはならない情勢のようだ。

 取り付く島もないような先行き見通しだが、個人消費の堅調さ持続には期待が持てそうだ。同時に実施した「賃上げに関する調査」によれば、2023年度に「賃上げ」をした企業は89.4%であり、24年度は「実施予定」が50.2%、「検討中」が33.0%と賃上げ機運は高い。

 コロナ明けの内需回復を確かなものとして行きたい。


(資料)SBCラジオ Jのコラム 2024.1.29放送

 

 

 

 

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