2023年は「おしくらまんじゅう」のような経済~長野県経済を振り返って~<2023・12・08>

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最終更新日: 2023年12月8日

「おしくらまんじゅう」のように方向感に乏しかった2023年

 今年は例えるなら 「おしくらまんじゅうのような年」だったように思う。
 「おしくらまんじゅう」というのは、何人かが背中向きに円陣を組んで「おしくらまんじゅう押されて泣くな」と押し合う遊び。冬の寒い時期に体を温める事が目的なため、勝敗を決するといった方向感はない。
 このように今年は、景気回復の力と、それを下押しする力が拮抗してしまい、回復したともしないとも言えない年だったのではないだろうか。

 主に3つの「おしくらまんじゅう」があったように思う。1つが「新型コロナからの回復と海外経済の減速」、2つが「物価高騰と賃上げ」、3つが「円安による輸出と輸入」だ。それぞれ説明をしよう。

新型コロナからの回復と海外経済の減速

 5月8日に新型コロナの感染症法上の分類が2類から、季節性インフルエンザと同じ5類に変更となった。これを機に小売店などへの消費者の出足やインバウンドを中心とした観光客が増えた。しかし、一方で物価高に対し金融引き締めを継続的に行ってきた欧米では景気が減速したため、日本の輸出の勢いを削いだ。

 2023年経済全体の構図は、このようにコロナからの回復基調に海外経済の減速が下押し圧力をかけ続けた。その結果、長野県経済も「持ち直しの動きはみられるが、常に一部に弱さを含んだ状態」が続いた。

物価高騰と賃上げ

 長野県の消費者物価指数(長野市:帰属家賃除く総合)をみると、今年は3%を超えるなど約40年ぶりの物価高となった。これに対し賃上げも、比較可能な2000年以降では最も高いものとなった。長野県が公表した2023年春季賃上げ・妥結状況調査結果での数値は、春季平均賃上げ率は2.93%である。

 賃上げを頑張ったが、物価高には及ばずといった結果となった。そのため、物価高を含めた「実質賃金」の水準を見ると、22年2月以降前年を下回って推移している。

 つまり、上からのしかかる物価を賃金が押し上げはしたが、「消費の回復はあくまで緩やかに」といった範囲内にとどまった。

円安による輸出と輸入

 物価は主に輸入される資源・エネルギーの高騰により跳ね上がったが、これを加速させたのが円安だ。

 円安は輸出をしている企業には高い利益をもたらしたが、輸入資材で事業を行う形態が多い企業にはコスト高が重くのしかかった。

 長野県内企業に望ましい円ドル水準を尋ねたところ、120円より円高が好ましいとする回答が約4割、125円までが約6割、130円までが約8割となった。内需型企業が多いのに加え、輸出型企業も長かった円高時代に対応し海外拠点を増やした結果、概ね1ドル130円を超える水準は好ましくないという経済構造になっている。

 今年の円ドルレートは平均すると140円程度だったことを考えると、この項目だけは、方向感がなかったというより、円安により「おしくらまんじゅう押されて泣くな」という方向だったようだ。

 

  2024年も海外経済の低迷が予想されている。
 1年間の「おしくらまんじゅう」で温まった日本経済である。均衡をほどいて勝ち戦に望んで欲しい。


(資料)SBCラジオ「Jのコラム」(2023年12月8日放送)
 

 

 

 

 

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