物流の2024年問題の影響と対応<2023.11.27>

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最終更新日: 2023年11月27日

間近に迫る物流の2024年問題

 最近、新聞やニュースなどで「物流の2024年問題」という言葉を頻繁に見聞きするようになりました。これは、働き方改革によって2024年の4月からトラックドライバーなどの自動車運転業務について時間外労働の上限が規制されたり、1日当たりの拘束時間が厳格化されたりすることで、ドライバーの稼働できる時間が短くなり、さまざまに及ぶ影響を総称したものです。
 24年の4月まで残り4カ月余りとなり、関連する貨物運送事業者や荷物を出荷する荷主企業などを中心に対策が進められていますが、この問題は私たちの生活にも大きく関わります。そこで今回は、物流の2024年問題の影響や私たちにもできる対応策についてご紹介します。

貨物運送事業者や荷主企業への主な影響

 まず、大きな影響が及ぶのは貨物運送事業者やトラックドライバーです。そもそもこの労働時間の改正は、ドライバーの労働環境を改善することが目的なので、慢性的な長時間労働に陥りやすいドライバーの働きやすさは向上します。一方、労働時間が制限されることで運べる荷物の量や稼働時間が減れば、貨物事業者の売り上げやドライバーの残業手当などの収入の減少につながります。
 この限られた時間の中で、これまで通りの貨物量や物流体制を維持するためには、さらなる人材の確保が不可欠です。例えば、これまで1人のドライバーが時間外をかけて担っていた長距離輸送を時間内でおさめるためには、途中で中継するなど、もう1人のドライバーが必要になります。ただ、こうした人員や物流体制の維持・変更にはコストもかかるため、貨物事業者は、荷主企業に対して運賃の見直しをお願いしなくてはならないでしょう。
 これにより、荷主企業にとっては物流コストが増加します。また、荷物の輸送量が減れば材料の仕入や製品の出荷・販売にも大きく影響し、企業の生産活動に支障をきたす恐れがあります。

消費者への影響と改善に向けてできること

 家庭で荷物を受け取ったり、店舗で商品を購入したりしている私たち消費者にも当然ながら影響が及ぶことが考えられます。
 例えば、これまで注文の当日や翌日などすぐに商品を受け取ることができていた配達に数日かかるようになるなど、配達サービスが低下する恐れがあります。さらに、魚・野菜・果物など、遠方から届く新鮮な生鮮品が入手しづらくなる可能性もあるといえます。
 こうした物流の2024年問題に対して、貨物運送事業者や荷主企業ではさまざまな連携により、物流の効率化や運送料金の見直しに向けた対応が図られています。では、私たち消費者はこの問題を少しでも改善していくためにどのようなことができるでしょうか。
 まずは、再配達を減らすことです。宅配の際に不在などで受け取れず、再配達をしてもらえるのは私たちにはありがたいサービスですが、宅配ドライバーにとっては負担となります。再配達を減らすため、確実に荷物を受け取れる日時や場所を指定するほか、宅配ボックスや玄関前のスペースなどを利用して非対面で荷物を受け取る「置き配」を推進することが大切です。
 また、インターネットショッピングなどを利用する際に、なるべくまとめて購入するようにし、注文回数を減らすことで、運送回数を削減することができます。こうした1人1人の行動の積み重ねが、物流の効率化につながっていきます。

持続可能な物流網の構築を目指して

 今回は物流の2024年問題の影響や私たちにもできる対応策についてご紹介しましたが、この問題は24年で終わりではなく、将来にわたって輸送力を維持するためには、継続して物流の効率化に取り組んでいくことが必要です。貨物運送事業者や荷主企業だけでなく、私たち消費者も現在の物流体制に目を向け、持続可能な物流網の構築のために意識や行動を変えていくことが大切だと思います。
 なお、物流の2024年問題については、経済月報2023年11月号掲載のトピックス「2024年問題を見据えた物流効率化の動き」で、物流の効率化に取り組む貨物運送事業者や荷主企業の事例を含めて取り上げています。ぜひ、ご覧ください。

 

2023年11月27日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

 

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