「ものづくり大賞NAGANO2023」大賞・グランプリ~加速する脱炭素への動き<2023・10・27>

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最終更新日: 2023年10月27日

「ものづくり大賞NAGANO2023」決まる

 第14回「ものづくり大賞NAGANO」の大賞、グランプリが決まった。

 今年から同賞は従来の製造業に情報通信業も加わったことから、松本市のキッセイコムテック株式会社のほか、安曇野市の日本装置開発株式会社、長野市の株式会社hide kasuga 1896の3社が大賞を受賞し、グランプリは株式会社hide kasuga 1896となった。

製造業を支える情報通信業、キッセイコムテック(株)

 キッセイコムテック(株)は、システムやパッケージソフトを開発、販売する情報通信業だ。

 長野県や各種団体との産学官連携を通じ、県内の中小製造業のIT導入・DX化支援にも取り組んでいる。

 これら地域への貢献に加え、県内の中小製造業の生産管理業務効率化のために開発したシステム「ProAxis(プロアクシス)」の実績や技術力が評価された。

 同製品は、製造業で行われる受注生産、見込生産、個別受注生産などでの運用全てに対応できるため、導入企業は多い。さらにグリーン調達に欠かせない化学物質の調査報告業務の支援や、製品毎のCO2排出量が可視化できるなど脱炭素に向けた支援も可能となっている。

 こうした時代の潮流に合った機能の充実により、近隣県、首都圏からの引き合いも増えている。

大手と伍する非破壊検査装置メーカー、日本装置開発株式会社  

 日本装置開発(株)は、FA装置および工業用X線検査装置の設計・製造を行っている装置メーカーだ。

 主力製品の工業用X線CTスキャナは、対象を破壊することなく、内部の見えない領域を3次元にて可視化し、形状・寸法を把握できる検査装置だ。自動車の部品などの量産ラインで、全ての部品について不良品かどうかを調べる全量検査に対応できる。

 同社の開発した高速X線CTスキャナーは、検査時間を従来比1/30に短縮、従来比5倍以上の検査エリアを実現、高精度技術により従来3μmだった3次元形状識別能力に関し1μm台を実現。等々世界初とも言えるスペックを揃えた高い技術力、市場性が評価された。

 また、地域に根差した企業として、難易度の高い切削・板金加工の8割を県内企業に発注しており、地域への貢献も大きい。

環境調和型モデル構築、株式会社hide kasuga 1896

 株式会社hide kasuga 1896は、環境調和型製品の研究、開発、販売を行っている。

 長野県産業振興機構が主催する「地域資源循環型複合材料研究会」の中核的企業として、技術面のみならず、ブランディング、マーケティングをリードしている。

 この研究会を契機に、県内林業の活性化のため、長野県森林組合連合会と連携し、長野県産のスギ間伐材を活用した循環型複合材TRANSWOODを開発した。本製品は、長野県産スギ間伐材の木粉と廃食用油由来の樹脂(ポリプロピレン)を50%ずつ配合させた100%自然由来の複合材である。

 同製品は、50%の木粉を配合することで従来品と比べ約30%、また使用後粉砕しリサイクルすることで従来品に比べ80%以上のCO2排出量削減が可能だ。

 都内の一流ホテルでテーブルウェアとして購入されており、百貨店での販売も始まっている。

 このように優れた環境性能に併せ、一歩先行くサーキュラーエコノミーを実現するビジネスモデルが高く評価された。

脱炭素のものづくり

 世界のものづくりの潮流は、脱炭素に向けて加速している。

 今回の大賞受賞製品もそうした流れに真正面から向き合っている。キッセイコムテック(株)の「ProAxis(プロアクシス)」は、グリーン調達や脱炭素に向けた支援の機能を売りとしている。日本装置開発株式会社の高速X線CTスキャナーは、量産品の全品検査を可能とし不良品を100%除外することで、無駄な加工費を徹底的に削減する。それら脱炭素の動きを象徴的に示したのが、株式会社hide kasuga 1896の事業モデルだったように思う。

 このモデルが今後長野県産業に根付き、脱炭素先進県になっていくことを期待したい。

 

  

  

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