コロナ禍で傷ついた地域経済につける薬<2023・10・13>

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最終更新日: 2023年10月13日

回復が遅れる観光・飲食業

 コロナ禍からの回復状況について、当研究所で県内企業を対象にアンケート調査を行った(時期6月中旬~7月中旬、対象企業629社、回答企業数330社)。

 全産業では、回復済みは48.2%とほぼ半数となった。業種別にみると、製造業(49.9%)、卸小売業(48.0%)もほぼ半数、建設業では65%とさらに進んでいる。

 一方で、サービス業は33.9%と遅れが目立つ。サービス業には、観光業、飲食業などが属し、コロナ感染拡大の影響を最も色濃く受けた業種であり、その傷がまだ癒えていないことが分かる。

 さらにこの傷に塩を塗るような事象が起こっている。

 昨今の資源・エネルギー高であり、多くの産業にマイナス影響を及ぼしている。これによるコスト上昇は、売り先への価格転嫁ができれば問題はないのだが、それが思うようにできないことから経営に深刻なダメージを与えている。

 コスト上昇分の「販売価格への転嫁状況」を尋ねると、「全く転嫁できていない」という回答割合は全産業で15.2%となった。製造業では5.8%と限定的となっている中、サービス業では36.8%と高い。この動きがコロナ禍からの回復にブレーキをかけている。

 サービス業は、我々の生活に密着した産業である。これらの産業が回復しないことには、地域社会にポストコロナは訪れない。とりわけ観光立県長野県にとり観光地は生活拠点と隣接しており、それらの地域の疲弊は生活拠点の荒廃へとつながりかねない。

 そのため、これらの業種の回復は、我々に課された喫緊の課題であると言えよう。

この苦境どうしたらいいのか

 観光業などを元気にする方法は、観光地に誘客をすることだ。それらの客に近隣の飲食店を回遊してもらえればさらに効果的だ。一般的にはこのように考え、誘客策を講じる。

 しかし、それよりも優先的に考えるべきことは、地元住民が地域の観光地を巡り、飲食店を活用することだ。コロナ禍においては、全国旅行支援として長野県では「信州割」などを行ってきたが、これら支援策には地元住民が地域を潤すという考えがあったはずだ。

 もとより地元消費者が地域外で消費をすることは、まるで穴の開いたバケツで水を汲むような残念な話だ。スマホを使ってのお手軽ネットショッピングなどはその最たるものだろう。地域の所得の多くは外部に漏れ、吸い取られている。

 こうした中であればこそ、我々はまずバケツの穴を塞ぐようにキメ細かく丁寧に地元の観光・飲食などの場で消費を行うことで、傷ついた産業を修復していかなくてはならない。

ポストコロナで浮上している地域産業の回復、脱炭素、食料自給

 多分、こうした危機感からだろう、10月から長野県では地元での消費を増やすために「しあわせバイ信州運動」キャンペーンをスタートしている。

 キャンペーンの趣旨は「日々の買い物で県産品や地域のお店を選ぶ消費行動の促進により、地域産業を応援し、農地や森林の保全、豊かな暮らしの創出につなげる『しあわせバイ信州運動』を官民一体で手中的に展開します」としている。

 本キャンペーンでは、コロナ禍で傷んでしまった地域のサービス業を官民で支援すると同時に、農地や森林保護も目的としている。

 ポストコロナの時代は、地域産業の復活に併せ、時代の要請となっている脱炭素に向けての森林保護や、食料自給のための農地の維持が重要課題として浮上している。

 我々は自らの消費行動を吟味することで、これら重要課題に関わっていかなくてはならないように思う。

 

(初出:SBCラジオ Jのコラム 2023.10.13放送)

 

 

 

 

 

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