平日に子供と一緒に学んで過ごす「ラーケーション」<2023.9.8>

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最終更新日: 2023年9月8日

新たに始まったラーケーション制度

 皆さんは「ラーケーション」という言葉をご存知でしょうか。これは、学習を意味する「ラーニング」と、休暇を意味する「バケーション」を合わせた新しい言葉です。具体的には、平日、子供に学校を休ませ、代わりに家族と一緒に校外学習を行うことを認める制度のことです。
 2023年9月から、名古屋市を除く愛知県内の公立小中学校・特別支援学校や、大分県別府市の小中学校を対象に、このラーケーション制度が国内で初めて導入されました。

平日に親子で学び、コミュニケーションを深める

 愛知県の「『ラーケーションの日』ポータルサイト」によると、この制度は県全体のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の充実を目指す「休み方改革」プロジェクトの中で生まれた、新しい学び方・休み方とあります。校外での自主的な学習活動を認め、子供は学校に登校しなくても欠席とはならず、「出席停止・忌引等」と同じ扱いになるということです。
 保護者等の休暇に合わせて学校に届け出をし、2023年度は年に2日まで、24年度以降は年に3日まで休みを取ることができます。ただし、学校で行事がある日などは、あらかじめ「ラーケーションの日を取得できない日(期間)」が設けられ、その日は届け出ができません。また、ラーケーションの取得によって受けられなかった授業の内容は、家庭で自習をする必要があります。
 ラーケーションの活動例としては、地域の史跡を巡る、公園の植物を調べる、農業体験を行うといった地域文化や自然に触れるものから、家庭での料理体験や、美術・映画・音楽等の芸術鑑賞などが挙げられており、家族旅行も含まれます。いずれも親子で体験し、学習した内容や感想を共有することで家庭内のコミュニケーションを深めることが重視されています。
 この制度が作られた背景として、親子で休みを合わせるのが難しい家庭が多いことがあります。愛知県内では、土曜日に働いている人が約45%、日曜日に働いている人が約30%にのぼるそうです。愛知県と同様の制度を導入した別府市も温泉旅館など観光業やサービス業で働く人が多く、平日の保護者の休みに合わせた子供の休み方を検討してきました。

働き方改革やワーク・ライフ・バランスの実現につながる

 このラーケーションはごく一部の自治体で始まったばかりであり、制度の評価や課題は今後さまざまな形で議論されるかと思いますが、個人的には非常に良い取り組みだと感じられ、徐々に導入する自治体が増えるのではないかと考えます。
 働き方改革やワーク・ライフ・バランスの実現に向けた新たなきっかけになりますし、平日に小中学生の子供と出掛けられる機会は限られるので、こうした制度を望む方も多いのではないでしょうか。実際、日本最大級のママ向け情報サイト「ママスタ」が23年3月に、ラーケーション制度が全国で実施されたら活用したいと思うかアンケートを行ったところ、8割の親が「活用したいと思う」と回答しており、多くのニーズがあることがうかがえます。
 土日や連休中などは親子で楽しめる施設が混雑していたり、宿泊の際も平日と比べて割高になったりするため、ラーケーションが利用できれば平日にゆっくり施設を利用でき、かつ財布にも優しいというのが親にとっては嬉しいですね。
 一方で留意すべき点として、学校で受けられなかった授業は自習によって補う必要があるため、当然ながら子供に対する親のサポートは必要です。また、学校に行きたい子供を無理やり休ませることにならないよう、家族でしっかりと相談し、計画的に利用することが望まれます。

多様な価値観の下で普及を期待

 制度があっても、親の仕事の都合や経済的な事情などから全ての家庭が平日に休みを取って出掛けられる訳ではないと思います。そうした点も踏まえ、多様な価値観や考え方に基づく新しい働き方・休み方の選択肢として、また子供にとって貴重な学習の機会、家族で過ごす大切な時間を生み出す契機として、ラーケーション普及に向けた検討が長野県内を含め各地で進むことを期待します。

 

2023年9月8日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

 

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