業況感再び悪化、回復の兆しが見えない製造業~長野県企業業況アンケート調査<2023・07・24>
2023年4-6月の業況感は2期振りに悪化
長野県企業の2023年4-6月の業況判断DIは、マイナス6.4と前期より4.4ポイント悪化し、2期振りに悪化した。3期連続で悪化している製造業に、5期振りに悪化した非製造業が重なっての全産業の悪化という結果だ。
製造業では、車載用半導体不足の緩和という好条件はあったが、海外景気の減速やPCやスマートフォンなどIT関連需要の減少という大きな下押し要因が、電子部品・デバイスや生産用機械の業況感をさらに悪化させDIは3期連続で悪化し、マイナス17.7となった。
非製造業では、新型コロナに対する行動制限がなくなったことから、ここ4期連続で改善をしてきた。今期も新型コロナの感染症法上の分類が5月に季節性インフルエンザと同じ5類になるなど、経済活動に対する阻害要因はさらに薄れたため、小売業や観光関連サービス業などでは客数の増加がみられた。
しかし、DIの数値をみると、仕入価格の高止まりや人手不足による人件費高騰から収益面では冴えなかったことが下押しする形で、業況感は前期の8.0から4.7ポイント下げ3.3と5期振りに悪化した。
ただ、プラス水準を維持しており、非製造業を巡る経済環境が大きく悪化した訳ではない。
物価高騰、人手不足で先行きも悪化見通し
新型コロナが季節性インフルエンザ相当になったことで、世の中の雰囲気も明るくなった。今後の業況感の改善に期待したいところだが、先行きの7-9月期の見通しはさらに悪化する見通しだ。
新型コロナの重荷がなくなった非製造業についてみると、夏季観光の書き入れ時を迎えるほか、インバウンド需要の増加も見込めるなど好条件が揃う。しかし、DIの数値をみると今期に比べ13.8ポイント大幅に悪化し、マイナス10.5とマイナス域に落ちてしまう。これは仕入価格の高止まりに加え、いよいよ人手不足が需要を支え切れないといった不安が相当に増してきているものと思われる。
一方の製造業では、3.2ポイント改善しマイナス14.5となる見通しだ。水準は依然として低いが、改善見通しは心強い。ここでも今期の好材料となった車載用半導体不足のさらなる緩和が期待されている。
業況が好転するポイントを考える
このように見ていくと、今後業況感が改善するためのポイントは以下の3点のように考えられる。
1つは製造業を下押ししているIT関連需要の回復だ。2つは非製造業を悪化させた仕入価格の高騰への対応、3つが人手不足への対応である。
IT関連需要の回復はメモリーなどの半導体の在庫調整の進展振りと重なるが、WSTS(World Semiconductor Trade Statistics/世界半導体市場統計)の市場見通しによると、市場の再拡大は24年とみている。今年一杯は大きな反転は難しいのかもしれない。
また、2つめの仕入価格高騰については、まずは価格転嫁を進め、利益を確保していくことが必要だ。そのためには、価格を上げるための付加価値向上策などが求められる。今年度の設備投資計画は当研究所調査によると対前年3割増と大きい。この中には旅館ホテルの改築なども多い。施設を改善することで、お客さまに提供するサービスを上げながら値上げをお願いしやすい環境を作ろうとする動きとみられる。
3つめの人手不足に対しては非常に悩ましい。まずは、今いる人材が辞めずに、今いる人材で生産性を上げることができるような企業の対応が求められる。そのためには、社員が働きやすく、やりがいを持って働ける職場づくりが必要となる。
会社を自分のものと考え、仕事で我が人生を豊かにしようと考えるような熱き燃える一騎当千の社員が集う企業となることで、今の人手不足を解消することが求められているのではないか。
(資料)SBC「Jのコラム」(2023年7月24日)
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