PPS成形・加工の専門企業 株式会社みやまの挑戦<2023・06・24>

印刷

最終更新日: 2023年6月26日

 株式会社みやま(茅野市)は、「スーパーエンプラ」といわれる高性能エンジニアリングプラスチックの一種PPS(ポリフェニレンサルファイド)を成形、加工する専門企業だ。

 製造業では、まだ少数派である女性経営者(百瀬真希社長)が率いる企業でもある。

広がるPPSの活用分野

 PPSはプラスチックの一種だが、金属並みの強度を持ち、熱に強く、軽い上に、金属より安価という優れた性能を持っている。

 そのため、今まで金属で作られていた部品を、より軽く、より安く作りたいという要望が同社には数多く舞い込んでくる。今までの取引の中では、高価な金属材料をPPSに変え、70%のコストダウンに成功した事例もある。

 同社は1995年からPPSの成形、加工を手掛けており、現在は給湯器部品やポンプモーターの部品カバー、エアコンの温度調節部品などを主軸に、400以上の成形アイテムを持っている。

 今後、自動車の軽量化や電装化、HVやEVの普及に伴い、それぞれの専用部品の需要増加が期待されている。

約30年をかけて蓄積した形成ノウハウ

 性能に優れたPPSだが、成形が難しいという難点を併せ持つ。

 一般的な方法で金型成形をしても、金型通りの形状にならず、設計図通りの寸法が出せないのだ。

 そのため同社は、試行錯誤を繰り返し、PPSの特性に合った成形条件を見だし、それに合った金型を自社で作り上げることで、高い寸法精度を実現できる体制を構築した。

 約30年にわたり手掛けてきたPPS成形の技術とノウハウは、容易に他社が真似をできるものではなく、その分野では国内でトップクラスのシェアを占めるに至っている。

 長野県内では国内、世界でトップクラスのシェアを持つ企業が少なくないが、それらの企業の共通点は「長年にわたり一つの分野を突き詰めてきた」という点だ。

 「どうして貴社のような中小企業がトップクラスのシェアを持っているのか」という質問に対しては異口同音に、「24時間365日、常にその課題を考えているのだから、どこにも負ける訳がない」とうものだ。

「愛・やさしさ・思いやりの企業」を行動指針に

 長年にわたり一つの分野を突き詰めるためには、社長一人では叶わない。

 「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」とは、岸田文雄首相が所信表明演説で語った言葉だが(出所は不明だがアフリカの諺との説がある)、企業が成長・発展する定石というのもこうした事ではないか。

 「みんなで行く」ためには、社員を大切にしなくてはついてきてはもらえない。

 百瀬真希社長は、「愛・やさしさ・思いやりの企業」を行動指針に経営を続けてきた。

 12年前に社長に就任した際には、「女性が経営者で大丈夫なのか」と言われたというが、女性であったからこそ「みんなで遠くまで行く」ことが出来た面も大きい。

 些細なことのようだが、良いと思った社員の行動や提案はすぐに褒め、社内で一番工場内を動き、社員全員に気さくに声掛けをしてきた。女性社員とは名前で呼び合うほど親しい。障がい者や他社で体調を崩してしまった人などの雇用にも積極的だ。

 障がい者が活躍できる会社は、社風が優しい。そして、何でも言い合える、家族的な会社となっている。

働きがいを持ち、会社の問題を自分事として捉える

 このような社風を作り上げ「働きやすい会社」にするとともに、「働きがい」を作ることが、「遠くまで行く」を果たすための社長の重要な仕事だ。「働きがいのある会社」となって社員一人一人が自ら主体的に行動を起こせるようになることが、「遠くまで行く」ためには欠かせないからだ。

 百瀬社長は「会社の成長は、働いている1人1人の成長があってこそと考えています。そのためには、会社での課題を他人事ではなく、自分事として捉えていけるかがとても大切です。会社の目標も自分事として、自分は何をやったら良いのか、そんな風に考えてもらえるよう工夫をしていくことが社長の役割の一つだと考えています」と話されている。

 そのため同社では、若手社員にチャレンジの機会を多く設けている。番組「明日を造れ!ものづくりナガノ」では、「上社プロジェクト」という取り組みを紹介していただいた。諏訪大社で祭事などに使う装束を保存する際の型崩れを防止する製品を、若手メンバー7名が部署を超えプロジェクトを立ち上げ取り組んだものだ。

 新たな仕事への主体的な挑戦や、それを通じての成長の実感は「働きがい」を向上させる。

 冒頭紹介したように、同社には金属材料からの代替要望が数多く舞い込んでいる。
  ここでも長年の積み重ねが、事業機会と同時に社員の「働きがい」を向上させるチャンスを呼び込んでいるように思う。

 「継続は力」とはよく言われるが、やはり、継続は力となる。


(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2023年6月24日放送)

 

 

 

関連リンク

 

 

  
 

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233