侍ジャパンのWBC優勝にみる「心理的安全性」<2023.4.24>

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最終更新日: 2023年4月24日

侍ジャパンはチームの「心理的安全性」が高かった

 侍ジャパンの劇的なWBC優勝から早1カ月が経ちますが、いまだに優勝の瞬間や村上選手の準決勝でのサヨナラタイムリーヒットなどのVTRを見ると興奮がよみがえってきます。
 今回の優勝が、日本が誇る一流のプロ野球選手たちの技術やパワーによってもたらされたことは言うまでもありませんが、それ以上に選手・監督・コーチ・関係者などの結束による一体感がチーム力を高め、世界一になり得たのではないかとも言われています。
 そして、その結束や一体感を生んだ要因の1つに、チームの「心理的安全性」が非常に高かったことがあったと考えられます。そこで今回は、私たちの職場などあらゆる組織が生産性を高め、成果を上げるために重要とされる心理的安全性について取り上げたいと思います。

重要な要素は「話しやすさ」、「助け合い」、「挑戦」

 心理的安全性とは、「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」のこといいます。従って、例えば「心理的安全な職場」とは、メンバーが不安なく健全に意見を言い合え、生産的で良い仕事ができる働きやすい職場という風に表すことができます。
 心理的安全性の高い職場では、メンバー同士のコミュニケーションが活発化して協力関係が生まれ、業績向上やメンバーの能力伸長、多様な価値観に基づくアイデア創出につながります。
 逆に職場の心理的安全性が低いと、意見や提案が出づらく、ミスへの非難や足の引っ張り合いが生じ、ミスやトラブルがより大きくなるほか、職場が暗くなって退職者の増加などにも至ります。
 では、職場の心理的安全性を高めるために必要な要素を3つ紹介しましょう。1つ目は「話しやすさ」で、時には雑談や職場の朝礼等で仕事に関係ないテーマでスピーチをするといったことで互いに話しやすい雰囲気が醸成されます。2つ目は「助け合い」で、常にメンバー同士や上司と部下の間で相談し協力し合える体制を整えることが大切です。3つ目が「挑戦」で、職場全体で前向きにチャレンジできる機運を高め、例え失敗してもその人を否定するのではなく、再度挑戦できるよう役割や機会を与えることで信頼関係が深まります。

侍ジャパンにみられた心理的安全性

 侍ジャパンでは、短期間でチームの結束を高める必要があった中で、栗山監督やコーチ陣はもちろんですが、選手同士の間でリーダー的な役割を果たしたダルビッシュ有投手の存在が特に大きかったと思います。
 今回、ダルビッシュ投手は大リーグ所属の選手として唯一事前合宿の初日から参加し、投手陣を引っ張る中で、自分より何歳も若い選手たちに対して献身的に接する様子が伝えられました。
 得意とする変化球の握り方やメジャーでの貴重な経験を惜しげもなく伝えたり、海外に移動する際に身体に負担のかかりにくい方法を教えたりと、代表経験の浅い選手たちには大いに支えになったはずです。こうした中で、個々のスキルアップに向けた「助け合い」や、メジャーの選手たちに「挑戦」し優勝を掴み取るといったモチベーションが積み重なっていきました。
 また合宿序盤、チームに馴染みきれずにいたオリックスの宇田川投手に対し、投手陣の食事会を「宇田川会」と称して会の中心に据えることで、本人も周りと「話しやすく」なり、結束が深まったと言われています。最年長で実績も豊富なダルビッシュ投手が自ら若いチームに溶け込み、何でも言いやすい雰囲気が作られたことで心理的安全性が高まり、能力を発揮できる環境が構築され、それが世界一に向けたチームの土台になっていったのだと思います。

新たなメンバーを迎えた職場でも

 弊所が企業の皆さん向けに実施している研修でも、特に管理職やリーダーの方々を対象とする講座で職場の心理的安全性についてお話ししており、関心の高いテーマとなっています。
 今月は新入社員など新たなメンバーを迎えた職場も多いと思います。上司の皆さんは侍ジャパンのようにチームの結束を深められるよう、心理的安全性を参考にしてみてください。

2023年4月24日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

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