「民芸」の世界観で家具ブランドを築く株式会社松本民芸家具~<2023・04・23>

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最終更新日: 2023年4月23日

今に生きる伝統工芸品

 伝統工芸品の多くは、生活様式の西洋化や低価格化の波に押される形で急速にその市場を失っている。

   一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会のデータによれば、1983 年に約 5,400 億円あった生産額は、現在では1,000億円を割っている。

   そのような中、(株)松本民芸家具(本社:松本市)は、300年以上の歴史を持つ松本家具および松本民芸家具を製造し、全国のファンに販売を広げている。

民芸としての松本家具

   松本地域は、松本城の築城に合わせ大工など建設を中心にさまざまな技術を持つ職人を全国から集めたことで和家具の生産が盛んとなり、大正末期には日本一の生産高を誇った。

   ところが、第二次大戦後には、ライフスタイルの変化などにより需要が急減し存亡の危機に立たされた。

   こうした中、松本家具を後世に残すため、世界の民芸家具を学び、時代に合わせた椅子やテーブルの製作に取り組んだのが、同社の創業者池田三四郎氏である。

   三四郎氏が影響を受けたのが、柳宗悦が展開していた民芸運動である。「民芸運動の父」と称される柳は、無名の職人により作られた民衆の日用品に高い美の世界を見出し、これを「民芸」と呼んだ。1936年に東京に日本民芸館を開設し、ここを拠点に民芸品を世に普及すべく「民芸運動」を展開した。

   池田素民常務で3代目となる松本民芸家具は、松本家具の伝統を受け継ぐ企業として、松本民芸家具ブランドを作り上げてきた。

   ここに寄り添うファンは、その実用性の中に美を見いだしてもいるのだろう。

職人が担う「木取」「組立」「塗装」

 ブランドで約束された品質を担うのが職人だ。

   同社の家具づくりは、「木取」「組立」「塗装」の3つの部門からなり、それぞれの職人が腕を振るう。

  「木取」は、適材を家具の適所に割り当てていく。板から必要な部材を切り出し、幅や厚みを整える。家具に表情を出すために、木目を計算して切り出してくるのだ。

   「組立」は、カンナでの加工を施しながらの作業となる。50種類以上のカンナを使い分け、多様な形状を作り上げ、組み立てていく。

   「塗装」は、全てを手バケで塗っていく作業だ。何度も塗り、層を重ねることで色の深みを出している。使い込むことで、塗り込んだ下の層が出てくる。これが製品の奥行きを醸し出している。

徹底して顧客ニーズに応える

   同社は、レギュラー商品だけでも800種類を揃えている。

   これに、顧客ニーズに対応して製作した準レギュラー商品を合わせると2,000種類にもおよぶ商品点数となる。

   時代に合わせた商品作りへの回帰で復帰を遂げた同社にとって、顧客ニーズを把握し、それを実現することは重要な経営課題である。

   販売展示場などでしっかりと顧客の声を聞き、それを形にできる技術を磨き上げ、継承してきた。

   そのようにして作り上げた多種多様な椅子。「使い始めると、この椅子じゃないと嫌だ」と、そんな感想を漏らすファンが多い。

   この顧客との強い関係性こそが「松本民芸家具」がブランドである証である。

   そして、顧客はこのような機能や品質に併せ、独自の世界観にも共感している。それが柳宗悦の「民芸」に連なっている。

   「松本民芸家具」ブランドがファンを広げることで、同地域の価値もさらに高まることを期待したい。


(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2023年4月23日放送)

 

 

 

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