リスキリングによる戦略的な人材育成<2023.3.10>

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最終更新日: 2023年3月10日

時代の変化を捉え、必要なスキルや知識を習得するリスキリング

 2021年2月の経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会」によると、リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。
 デジタルトランスフォーメーション(DX)など急速に進展するデジタル化の中で、その技術の導入や運用のためのスキル習得は持続可能な企業経営にとって不可欠です。しかし、デジタル分野のスキルを持つ人材は大きく不足しており、リスキリングによる人材育成が重要な課題となっています。
 なお、社会人の学び直しとして同様の意味を持つ「リカレント教育」は、個人が主体的に学び直しを行うものである一方、リスキリングは、企業が事業戦略の一環として従業員に学びの機会を与えるという点で異なっています。

国・県は人材への施策を拡充

 22年10月、岸田首相が国会演説でリスキリング支援について取り上げ、人への投資策を「5年で1兆円」に拡充すると明言しました。同年12月には、厚生労働省の人材開発支援助成金の中に「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されるなど、支援制度の拡充も進んでいます。
 一方長野県は、21年9月に「長野県産業人材育成プラン2.0(第11次長野県職業能力開発計画)」を策定しました。この中で、労働者の自律的・主体的なキャリア形成推進に向け、リカレント教育およびリスキリングによる新たな職業能力を開発するとしています(図表)。
 このように、国・県などがリスキリングを促進する動きを広げる中、県内外の中小企業においても、ITの活用等に向けた戦略的な人材育成が始まっています。

リスキリングに取り組む中小企業

 (株)陣屋(神奈川県秦野市)は、経営する老舗旅館の業務改善に向け、顧客・業務管理を一括で行う旅館管理システム「陣屋コネクト」を自社開発し、導入しました。そして、同システムを使いこなすためにはパソコンやタブレット端末等の全社的な活用が不可欠だったため、全従業員に対してリスキリングを実施しました。システム活用の重要性を経営者が繰り返し従業員に伝えながら、紙の台帳の使用禁止や、顧客情報のデータ化・共有化を進めることで、従業員の働き方を効率化すると同時に、より上質なサービスの提供を実現しました。
 NiKKi Fron(株)(長野市)は、フッ素樹脂や繊維強化プラスチックなどを加工する部品製造の自動化・効率化や、ITやデジタル技術を活用したDXなどの業務改革を進めています。23年度からは社内の業務内容や階層に応じて「事務系女性」、「ITスキル保有者」、「工場系若手」、「技術本部および間接部門の若手」、「中堅」、「部門長・役員」といった6つの受講コースを設け、デジタルに関するリスキリングを全社的に進めていく計画です。

 

※ リスキリングの概要や企業の取り組み事例は、経済月報2023年3月号掲載のトピックス「持続可能な経営に向けた戦略的なリスキリング」で詳しく紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

 

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