物価高下の長野県内企業の賃上げ動向について<2023.2.10>

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最終更新日: 2023年2月10日

この時期に増える賃上げの話題

 新年度に向けて企業の賃上げに関する話題が多くなってきました。特に今年は物価高を受けて賃上げ要求の声が高まっています。大手企業などでは例年2月頃から、各企業の労働組合が賃金引き上げなどを中心とする要求を企業に提出して団体交渉を行い、3月頃には企業から賃上げの有無やその水準について回答がなされます。これを一般に「春闘」と呼んでいます。
 そこで今回は、賃上げについて、その内容や県内企業の動向などについてご紹介します。

物価高への対応はベースアップが重要

 賃上げとは、一般的には企業が基本給を上げることを言います。そして、基本給を上げる方法として「定期昇給(定昇)」と「ベースアップ(ベア)」の2つがあります。定期昇給は、従業員の勤続年数や年齢、仕事の成果などに応じて年に1回もしくは2回など、企業が設定したタイミングで基本給を上げることを言います。
 対してベースアップは、企業の業績などに応じて従業員全員の基本給の水準を一律で引き上げる仕組みのことです。従って、「基本給の3%をベースアップする」と決まった場合、新入社員も含め全従業員の基本給が一斉に3%上がることになります。
 これを物価高への対応という面から考えると、物価上昇を上回る率でベースアップがなされないと実質的な賃下げになってしまい、物価高に賃上げが追い付かずに購買力が落ちてしまうことになります。従って、賃上げにおいてはベースアップがより重要ということになります。
 この他、基本給そのものの引き上げとは別に、賞与(ボーナス)の増額や経済情勢などを鑑みた一時的な手当などで支給額を増やす方法もあります。

県内は75%の企業が賃上げに前向き

 では、長野県内の企業は2023年度の賃上げにどのような方針で臨むのでしょうか。長野経済研究所が22年12月から23年1月にかけて実施し、県内309社から回答を頂いた「最近の経済環境の変化に関する調査」の結果からご紹介したいと思います。
 まず、23年度の賃上げについて実施方針を尋ねると、全体では「賃上げをする」が32.8%、「賃上げを検討している」が42.3%となり、合わせて75.1%の企業が賃上げに前向きな姿勢という結果になりました。また、業種別に「賃上げをする」と回答した割合みると、建設業が42.9%と最も多くなりました。これは、22年から国の公共工事に入札する際に賃上げの実施が加点の対象になっていることや、深刻な人手不足への対応といった要因が考えられます。
 次に、「賃上げをする」または「賃上げを検討している」と回答した企業に対して賃上げの内容について聞くと、全体では「定期昇給」が77.0%と最も多く、次いで「ベースアップ」が45.1%、「賞与(一時金)」の増額」が43.8%、「インフレ手当(一時金)の支給」が12.4%となりました。
 この結果を見ると定期昇給に比べてベースアップを実施する企業はだいぶ少ないようです。ただ、22年4月に同様の調査を行った際には、ベースアップを実施する企業の割合は40.4%でした。単純な比較は難しいのですが、この1年でベースアップに前向きな企業の割合が少し増えた結果となっており、今後も継続的な企業の賃上げ動向をみる上で、このベースアップの実施割合が注目ポイントだと考えています。

建設的な労使交渉を

 最近は物価高などによる収益の悪化や世界経済減速の影響による業績の下振れなど、企業を取り巻く環境は厳しい状況にありますが、それでも人手の確保や従業員の離職を防ぐといった観点から、ベースアップが避けられないとみる経営者も多いようです。
 今後、新年度に向けて賃上げ交渉が行われる企業も多いと思いますが、労使それぞれが納得できる結果が得られるよう、各社で建設的な交渉が進むことを期待したいと思います。

2023年2月10日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

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