2022年経済回顧~病気療養中に大怪我をし高熱に苦しんだ年~<2022・12・9>

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最終更新日: 2022年12月9日

 今年は「病気療養中の世界経済が大怪我をし、高熱に苦しんだ年」と比喩できるような1年だったように思う。

 病気というのは言うまでもない新型コロナであり、3年目を迎えた。1月早々にまん延防止等重点措置が発出されたため、国内の経済活動は停滞した。

 その病気療養中の2月に「ロシアのウクライナ侵攻」という大怪我を負った。

 そうでなくてもコロナの病により「物価」という熱は上がっていたものが、「ロシアのウクライナ侵攻」という大怪我により身体のホメオスタシスを脅かすほどの高熱となってしまった。非常に大雑把な言い方をすれば、世界に多くのエネルギーと穀物を供給していた同地域が世界経済から遮断された結果、需要に供給が追い付かなくなり更なる物価高騰となった、そんなイメージだ。

 高熱の治療にあたった医師は、欧米ではかなり強い薬が必要だという診断で「金利引上げ」という薬を投与した。しかし、日本では、そんな強い薬を投与すれば体がもたないという診断からそれを見送った。

 それらの治療の結果、薬を使った米国には「ドル高」、「景気減速」という副作用、使わない日本には「急激な円安」という新たな病に侵されているようだ。10月には32年ぶりに1ドル150円を突破した。

世界の病と怪我(円安・物価高)は長野県経済にどのような影響を及ぼしたのか

 円安について、当研究所が長野県内企業を対象に4月に行った調査によると、9割の企業は「115円より円高が望ましい水準」と回答している。となると現在の1ドル137円という水準は相当に厳しい水準だ。

 円安がなぜ厳しいのかというと、輸入資源の高騰に拍車をかけるからだ。
同じく当研究所の調査によると、7割の企業が「輸入資源高騰が自社の業績にとりマイナス影響」と回答している。

なぜマイナス影響を受けるのか~業績へのマイナス理由と各企業の対応

 多くの企業は石油を始め輸入した物資を使い、物を作ったり、サービスを提供している。そのため、輸入物資の値上がりはコスト増となり、業績を悪化させる。

 しかし、これら値上がり部分を取引先に販売する際に価格転嫁できれば、マイナス影響は避けられる。

 当研究所の調査でその部分も尋ねてみると、「価格転嫁は5割以下」とか「全くできていない」とする回答割合が約半数となった。十分な価格転嫁ができておらず、それゆえにマイナス影響となっている企業が7割という状況に陥っていたのだ。

 必要な対応として、当面は値上げ交渉努力を地道に続けることだ。自社だけではその方法も分からないことが多い。その場合には、(公財)長野県産業振興機構などで価格交渉力アップのためのセミナーが開催されており、そうした機会を活用すべきだろうし、企業同士の情報交換も有効だ。

 そして、中長期的な対応としては、インフレ時代の到来とも言えるこの情勢には値上げができる経営としていくことが必要だ。簡単なことではないが、値上げをしても納得してもらえる高い品質の商品・サービスへの向上、開発と提供ということになるだろう。

 県内を見渡すと既にコロナ禍において空いた時間を利用し、社員教育を徹底することでサービスの品質向上に伴う値上げに成功した宿泊事業者もいる。

来年に向けての展望~敵は海外にあり

 こうした状況下ゆえに、新年は物価高騰に見合った価格転嫁がどこまで進むかが注目される。

 そして、新年経済全般としては、長野県内はコロナの収束に伴う個人消費と企業の設備投資にけん引される形での堅調な推移が見込まれる。

 スペイン風邪も3年で収束していることを踏まえると、コロナもようやく収束の年を迎えると考えられる。いよいよアフターコロナの2023年として、いままで制約していた個人消費が活発化することが期待される。長野県観光にも明るい光が差す。

 ただ、「金利引上げ」という劇薬を使い病気を抑えている米国経済が重篤となるリスクも忘れてはならない。

 「敵は海外にあり」の2023年となるようだ。


(資料)SBCラジオ「Jのコラム」(2022年12月9日)
 

 

 

 

 

 

 

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