行き詰まったら「何のために」を思い起こそう~稲盛さんに学ぶ「目的」の重要性~<2022・11・11>
仕事で辛いときに意外と忘れていることは
仕事をしていて辛いと感じることは、誰でも日常茶飯事であるだろう。
私なども、調査レポートというようなものを書くことが仕事の一つだが、そんなにスラスラと書けるものではなく、大概が煮詰まって頭を抱えている。「あ~辛い、なんでこのようなものに取り組んでしまったのか」、「もっと書きやすいテーマはなかったのか」などと逃げ口上のような事ばかりが思い浮かんでくるのが常だ。
先日も相も変わらずにそのような事をブツブツと呟いている時にふと、「そもそも何のためにこれは書こうと思ったのか」との思いが頭をもたげた。
仕事が辛いときは、その「目的」を忘れている事が多いものだ。
私ども地方シンクタンクでは、例えば、統計などから経済の分析をしその構造を明らかにしたり、元気な地域や企業の事例を分析する中から、元気になるための情報提供を行うことなどを業務のひとつとしている。
そうであるなら、その対象となる地域なり企業を何故訪れてみようと思ったのか。その結果、そこから何が分析でき、地域や企業に役立つ情報は何だったのか。それをどう訴えられるのかを考えるべきだ。
目的を思い出してみて動き出したモチベーション
ところが、煮詰まった時には、そんなことをすっかり忘れ、「文章の“てにをは”をどうしようか」とか「なんとか格好の良い形にならないものか」など、手段が目的化したような混沌に陥っている。
そもそもの目的を思い出し、「取材した会社から学んだ素晴らしい点をそのままに書き出せばいい」、「訴えたい結論は分析できたのだから、それをしっかりと知らせることだ」と考えると頭もクリアになった。
そうなるとようやく、「このレポートで長野県経済は元気になるに違いない」など使命感が燃えたぎり、俄然モチベーションが上がり、キーボードを打つ手も早くなった。
稲盛和夫さんの「人を生かす」より
恥じ入るような私の体験談をご紹介したが、京セラ・KDDI創業者の故稲盛和夫さん(2022年8月死去)の「人を生かす」(日本経済新聞出版)という著書に、大変に参考となることが書かれていたので、その一節を紹介したい。
この本では、企業経営者からの質問に対し答えるという体裁で書かれている。
ある鉄製品加工を営む中小企業の経営者から「自社のような3K業種の仕事で、社員に夢と誇りを持たせるにはどうしたらいいのか」という問いへの稲盛さんの答えが以下のようなものだ。
「これは大変重要な質問です。3Kの仕事だからというのではなく、社員の動機付けをすることは、すべての経営者に共通する重要な問題です。例えば、営業部員に仕事に対する夢と誇りを持たせるようなことが、どこまでできているでしょうか。惰性で仕事をやっているだけで、社員にモチベーションを持たせられていないケースが少なくないだろうと思います。よい経営者は、どんな仕事であっても『私たちの仕事は、社会的にも人間的にもたいへん意義があるのだ。たいへん立派なことなのだ』と自分自身にも社員にも言い聞かせています。まず、社員に対して会社の存続理由、自分の仕事が社会で必要とされている理由を明確にすることが必要なのです。―中略―営業の社員に「おまえ、これを売ってこい」と命じるだけではモチベーションになりません。これを売ることが、どういう社会的意義があるのか、わが社にとってどういうことを意味するのか、あなたの人生にとってはどういうことを意味するのかをいわなければならないのです」。
まさに「何のために」という目的こそがモチベーションの根源だと、稲盛さんは説いているのだと思う。
仕事の行き詰まりを打開する方法はこればかりではないと思うが、「何のために」というそもそもの目的に立ち返ってみるというのは一考だろう。
我が人生にとって、この仕事の意義とは?
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