人を大切にする経営で元気をつくる(2)-高木建設株式会社-<2022・10・14>
地域に「ならでは」と思われる社会貢献
長野市にある高木建設(株)(会長:髙木正雄氏)は、公共工事を主要事業に個人住宅や古民家再生も手掛ける総合建設業だ。
長年にわたる地道で確かな仕事振りが発注者である自治体から評価され、多くの「優良工事表彰」や「優良技術者表彰」を受けている。
また、「公共事業は地域の役に立つものだが、地域の理解があってこそできるもの」という髙木正雄社長の考えから事業を超えた社会貢献活動にも力を入れてきた。
例えば、罪を犯してしまった人の立ち直りを支えるため、更生保護雇用主会に登録し雇用の場を提供する就労支援や、社員全員が参加して行われる月1回の自社周辺のゴミ拾いや草刈り、里山の整備などである。
同社が力をいれる「性別に捉われない職域の拡大」
同社は、全社員82名中女性社員が14名と2割を占め、役員の他技術職、営業職を担っている。
技術職としては5名の女性が活躍しており、内訳は1級建築士が2名、2級建築士が1名、2級土木施工管理技士が1名、同技士を目指し現場で経験を重ねている新人が1名という陣容だ。
また、大規模工事を管理できる現場代理人や、営業担当として公共工事入札や大型施設の受注で成果を上げている女性もいる。
同社では、これら女性が働きやすい職場となるよう、学校の行事やPTA 、子どもの急な病気の看護や送迎、不妊治療、親の介護、地域行事などに柔軟に対応できる体制を整えてきた。
高木亜矢子常務は女子社員1人1人に対しこまめに声掛けをし、女性特有の健康問題などの相談にも真剣に応えるよう努めてきている。さらに、定期的な女性だけのランチ会を企画するなど、女性同士のコミュニケーションが滞らないよう細かい気配りも徹底している。
髙木常務は、女性雇用に対する思いを次のように語っている。「建設業の技術職は男性でなければできないというのは間違った先入観で、女性でも十分できる。そのため、女性の活躍の場を当社にどんどんつくって、性別に捉われない職域を拡大していきたいと思っている」、「3K職場との先入観から学生から敬遠されがちな建設業だが、仕事の実態を知ってもらえば女性に人気の職場になれる可能性は高い」。
女子学生のインターンシップで建設業の魅力を伝える
同社では、女子学生のインターンシップに力を入れており、中学校からの受け入れも実施している。
管理技士を目指し頑張っている新人の女性は、中学生の時に同社で土木現場を体験し、その仕事や同社の社風に魅せられ、工業高校の土木科で学んだ後、同社に入社をした。中学生の目にも、同社の人を大切にする経営が鮮明に見えたのかもしれない。
また、高校生向けのインターンシップなどでも同社の女性社員比率が高いことが影響してか、女性の応募が多くなっている。ワークショップでは、設計や現場管理に関する事を体験してもらうことが多いため、現場での力仕事ばかりをイメージしてきた学生には驚きだったようで、「建設業のイメージが変わった」との意見が多く寄せられている。
古民家の改修についても、お客様の要請に応えられる空間を構想して図面に落とし込むワークショップを行っており、参加した女子学生の目が最も輝くプログラムとなっている。
「自らの感性で世に必要とされるものを創造できる」。建設業の持つ真の魅力はこういったところにあり、体験した女性が魅了されるのはむしろ自然とも言える。
人手不足に悩む建設業にとって、女性の活躍は今後大いに期待されるところだ。
高木建設(株)のように、どのような社員にとっても働きやすい職場環境を整えて、性別に捉われない職域の拡大を図る会社が県内により多く広がることを期待したい。
(資料)長野経済研究所「経済月報」『社員を大切にする経営で元気をつくる』(2022年10月)
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