自由自在な加工法「鋳造」を極める~株式会社コヤマ<2022・09・01>
独立系の鋳造専門メーカー
鋳造というのは、金属を一旦液体に溶かすことで、どのような形状も自由自在に作り上げることができる加工方法だ。その様は、まるで板チョコを作るようにも見える。
長野市にある株式会社コヤマは、この技術を用い建設機械や自動車の部品を作り上げる鋳造専門メーカーだ。早くから生産の自動化に取り組んでおり、工場には人よりも多くのロボット・機械が目立つ。
同社は、どの建設機械や自動車メーカーの系列にも属していない独立系鋳造メーカーとして3期連続で国内売上高トップを達成している。
同社の創業は1945年、創立76周年を迎える。戦後の物資が不足する中、鍋や釜などの家庭用品を作り始めたのがその始まりだ。
現在では、長野市の本社工場のほか、須坂市にアルミ製品専用の工場を持ち、2010年にはタイへの進出も遂げている。
強みその1 一貫生産で大手企業のパートナーに
好調な業績の背景にある強みの1つが、「一貫生産体制」だ。
同社では、金型の製作から、鋳造、後工程の機械加工に至るまで全ての工程を自社で完結できる一貫生産体制を整えている。
鋳造は、複雑な工程でのさまざまな要素が相互に関係しながら一つの製品を完結させている。そのため、その全てをコントロールできる体制が構築できれば、製品の品質を細やかに管理することが可能となる。
同社のものづくりは、迅速で適切なコントロールを各工程で行えるため、顧客の要望に柔軟に応えることが可能となっている。
下請け企業は、このように大手企業の「痒い所に手が届く」ような製品を供給できれば、その企業のパートナー企業として伴に歩むことができる。
同社は、大手企業の新製品の開発企画・設計の段階からの参画を多く要請されているという。まさにパートナー企業なのである。
強みその2 製造機械は自前修理+人材育成
もう1つの強みが、自社製造機械の保全力である。
製造業にとって稼働率は、生産性向上のために非常に重要な要素だ。
機械が故障して、その都度加工が止まっているようでは品質の安定はおろか利益が飛んでしまう。
そのため同社では、「自社の機械は自分達で修理し、守る」という方針を持って、機械の点検や修理を自ら行うことで、機械停止率ゼロを目指している。
ちょっとした機械トラブルなら、それぞれの現場で自ら解決できる体制が出来上がっている。
こうした対応ができるのは、社内に「保全基礎教育学校」という講師も教材も全て自前で揃えた仕組みを用意しているからだ。この教育システムでは、就業時間内に208時間をかけ、座学と実技を重ね、現場の暗黙知を含めた保全技術を身に着けられるようになっている。
鋳物を作る技術ばかりではなく、その「鋳物を作る機械を治す技術」を身に着けた先鋭が現場を守っている。
多量エネルギー消費産業ゆえの脱炭素への注力
鋳造は金属を溶融する工程で多量なエネルギーを消費し、二酸化炭素を排出する。
そのため地球温暖化防止のためには、この工程でエネルギー源として使用されるコークスなどの化石燃料の使用を効率化したり、もしくは代替することが求められる。
同社では、これを植物性廃棄物を押し固めた「バイオブリケット」で一部を代替することに成功している。
鋳物の量産体制でこの利用に成功しているのは、世界で同社しかない。
10年程前から研究を重ね、品質面、コスト面で実用化の目途が立つのには6年の歳月を要した。ようやく、4年程前から本格導入を始めた。
このバイオブリケット、一貫生産体制に強みを持つ同社らしく自社での生産を行っている。それゆえに、地域内の植物性廃棄物を受け入れ、自社でサーマルリサイクルを行うという資源循環モデルも構築している。
長野市などの長野県北信地域は、キノコの生産が盛んであることから廃棄される廃培地が多い。また、リンゴの剪定枝や木材の加工クズなども多く排出される。これらの廃棄物処理に悩む事業者と同社を長野市がマッチングしたものである。
我々の身の回りの製品の多くには、鋳物が使われている。現代社会や産業の基盤を担う主要技術の一つが鋳造技術とも言えよう。
同社のこうした縁の下の力持ちとしての活躍と同時に、サーキュラーエコノミーの担い手としての活躍もますます期待されていくことだろう。
(資料)SBC信越放送「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2022年8月28日放送)
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