新型コロナで悪化する景況感と雇用情勢<2020・8・18>

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最終更新日: 2020年8月18日

企業の景況感は、リーマン・ショック時の水準まで悪化

   当研究所では、四半期ごとに長野県内企業666社を対象に「四半期別業況アンケート調査」を実施しており、今回は7月に公表した4-6月期調査の結果についてご紹介します。
県内企業の業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業割合-「悪い」と答えた企業割合、%ポイント)は全産業が△60.5と6期連続で悪化し、リーマン・ショックで落ち込んだ09年7~9月期(△63.5)以来の水準まで悪化しました。
 業種別にみると、製造業は△67.4と前期(1-3月期)に比べ23.9ポイント、非製造業も△54.6と同18.6ポイントと大幅に悪化しています。製造業は、新型コロナの感染拡大による国内外の需要減少のほか、感染拡大防止に向けた工場の稼働率低下などから、自動車関連を中心に幅広い業種で生産活動が低下しています。非製造業は、緊急事態宣言による外出自粛や休業要請の影響を受け、飲食業や宿泊業など観光関連を中心に売り上げが急減しています。
 7~9月期の見通しについては、全産業が△63.7と今期に比べ3.2ポイントとさらに悪化する見通しとなっています。このうち製造業は△69.6と同2.2ポイント、非製造業は△58.8と同4.2ポイント、それぞれ悪化する見通しです。製造業は、新型コロナの影響による需要減少が続くことが予想されます。非製造業は、5月25日に緊急事態宣言が全面解除されたことから、経済活動の再開に伴って夏季観光需要の増加が期待されるものの、感染リスクが残る中での改善は限定的で、全体としてやや悪化の見通しです。 

今後は、雇用の悪化防止がポイントに

 企業の景況感の大幅な悪化により懸念されるのが、雇用面への影響です。上記アンケートと同時に尋ねた「新型コロナウイルスの影響に関するアンケート調査結果」で、従業員の6月末時点での出勤状況は、コロナ感染が広がる前の1月末と比較して、「減少」(「大きく減少」と「減少」の合計)が35.9%となりました。特に製造業では非正規社員の人数を「減少(同)」させている企業割合が22.5%と高くなっています。
 また、長野労働局が最近公表した「最近の雇用情勢」をみても、6月の県内の新規求人数は、全体で前年同月比23.1%減少し、新型コロナの影響が広がり始めた3月以降、二桁の減少が続いています。企業側が求人を絞る一方で、就業を希望する新規求職者数については、6月が全体で同17.6%の増加に転じています。この結果、労働市場の需給状態を示す有効求人倍率は1.03倍となり、均衡状態を示す1倍を割り込む寸前まで低下しています。
 こうした中、国はさまざまな対策を打ち出しています。その中で雇用情勢の悪化を防ぐための対策の1つが、休業手当を支払った企業に支給される雇用調整助成金です。先ほどの調査で新型コロナウイルス禍での雇用面への対応として、「雇用調整助成金を活用した」企業は35.7%となったほか、「活用予定」(5.9%)、「検討中」(8.1%)まで含めると、半数の企業が活用を予定しています。ただ、この助成金の期限は今年9月末までとなっており、延長を求める声が増す中、政府も対応を進めています。
 新型コロナの感染拡大の長期化が予想される中で、雇用の悪化をどれだけ防げるかが、地域経済の先行きを占う上での重要なポイントになりそうです。

(初出:2020年8月14日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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